くら寿司がAI養殖を取り入れた新会社設立、「スマート養殖」のかたちとは?
AI養殖で養殖業の問題点を解決!
「KURAおさかなファーム」の取り組みを具体的に見ていこう。自社養殖では、くら寿司が今年3月に発表した「オーガニックはまち」の養殖からスタート。オーガニックはまちとは、飼料、養殖環境などにおいて国際的基準を満たしたオーガニック魚で日本初の取り組みだ。今後はハマチ以外の魚種での展開もめざしており、候補としてははまち同様養殖が盛んなタイが候補に上がっているという。
既存の養殖業者と中長期契約を交わし、生産した魚をくら寿司が全量買い取ることが前提の委託養殖では、業界全体で深刻な問題になっている人手不足と労働環境の厳しさを、AIを活用した「スマート養殖」で緩和することをめざす。具体的には、ウミトロン(東京都)と協業し、AIやIoT技術を駆使したスマート給餌機「UMITRON CELL(ウミトロン セル)」を導入する。養殖で最も手間がかかるのは1日3回程度必要な餌やりで、従来は魚の食いつきを見ながら数十キロの餌を与えるという、重労働であることに加えて経験や勘も必要な作業だった。これをAIを利用し、適切なタイミングで必要な分だけの餌を与えることを可能にしたもので、過剰な餌やりによる環境汚染の防止や、人力では難しいこまめな餌やりで成育スピードを早めるなどの効果が期待できるとされている。餌やりの状況や魚の様子は、陸地からスマートフォンを通じて確認することができ、労働負担の軽減に大きく貢献しそうだ。
卸売事業では、生産した魚をくら寿司で提供する寿司ネタとしてだけ利用するのではなく、全国のスーパーマーケット(SM)への卸販売も行うことで魚の安定的な販路確保にも注力する。将来的には全国の漁業協同組合と提携し、天然魚の販路開拓支援なども行っていきたい考えだ。