連載最終回の本稿では、どうやったら企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が成功するのかを解説する。読者企業の皆さんは、多くの日本企業が失敗しているDXをぜひ成功させましょう。
経営者のコミットが必要条件
「DXをやらないといけない」――。
これはほとんどの企業の社長が思っていることです。その一方で国内小売企業のDXはほとんど失敗に終わっています。
DXが成功する企業には1つ共通点があります。それは、経営者、もしくはトップに近い人のコミットメントです。DXが成功するかどうかの要因として約70%はこれが占めると思います。
その理由は、DXは業務改革と似ているからです。「今まで仕事のやり方がこうだった。これからはこう変えていく」というのが業務改革です。その業務改革にデジタル要素が加わっているのがDXです。
経営者がシステムの詳細まで理解している必要はありません。CDO(最高デジタル責任者)、CIO(最高情報責任者)がやろうとしていることをバックアップする経営判断ができれば大丈夫です。
これは経営者がCDO、CIOと心中する勢いがないとできません。口ではDXと言いながら、デジタル改革に反対の意見が出たときに「現場の意見が重要だから、いったん様子を見よう」といった玉虫色のリーダーシップではダメです。
ただ、CDO、CIOが間違った方向に進もうとする場合もあります。これは大問題です。CDO、CIOの人選で、明確なセオリーはまだありませんが、「企業規模が似たところで実績を上げたことがある人」、「社外の人とたくさんつながりがある人」が適格です。売上高が1兆円の企業と1000億円では予算の感覚や必要なシステムがまったく違います。また、社内だけでなく、外部の“モノサシ”を持っている人のほうがDXを成功に導いていることが多い印象です。
現在、私は売上高約3000億円の食品小売企業のDXに取り組み始めました。そこは、人事・給与システムに数億円かかっていますが、クラウドのソフトウエアサービスであるSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の「スマートHR」に置き換えます。バックオフィス系はすべてSaaSに置き換える予定です。この連載で解説した「Google Workspace」、「Slack」も導入していこうと思っています。データサーバーはすべてオンプレミス(自社でシステムを保管・運用)からフルAWSに変えていきます。
ぼったくりの保守・運用費
DXの“聖域”として残されがちなのがシステムの保守・運用費です。経費節減を進める中でも、「何かあったときに大変だから」という理由で削れない企業が多くあります。
しかし、この保守・運用費はベンダーが儲けているだけで、ユーザーの役に立っていないことがほとんどです。勇気を出して、保守・運用は継続的に支払うのではなく、何か問題があったときに対応してもらう「スポット保守」に変更するのがオススメです。これに切り替えるだけで保守・運用費を大幅に低減させることができます。
スポット保守に切り替えると「対応が遅れてしまう」とベンダーは言いますが、それは嘘です。ベンダー側は、保守専門で24時間監視し続けている人員を抱えているわけでなく、そのほかの業務を兼任しながら何かあったときに駆けつけるというのがほとんどです。
情報システム部長がスポット保守に切り替えるという判断はなかなかできません。スポット保守に切り替えてコストカットしても評価されるわけでもなく、何かあったときに責任をとらされるリスクだけが残るからです。
DXを進める経営者は、情報システム部とベンダーの“一蓮托生”の癒着を断たなければなりません。