シップスがライブコマース内製化の先に見据えるPRの新しい形
コンテンツの内製化にこだわる理由
同社のライブコマースの特徴は、コンテンツを内製化していることだろう。
コンテンツ作りを担当しているのは、自社公式サイトの運営やECモールへの出店などを担う同社営業推進本部デジタルマーケティング部(約50人)。社内にスタジオがあり、動画を制作、配信するといった業務もすべて、部員が請け負っている。
動画の出演者は主に各ブランドのバイヤーやPR担当者で、商品のセールスポイントについて説明したり、着用例を紹介したりする。2台のカメラを使って、社内カメラマンが動画を撮影。チャットで届く視聴者からの質問に対応したり、ナレーションを担当したりするのも部員だ。同部では昨年から、公式ユーチューブチャンネル「シップスチャンネル」のコンテンツ制作も手がけている。
「出演スタッフも制作スタッフも慣れていかなければならない。柔軟な制作体制はライブコマースだけでなく、他のシーンでも必ず必要となってくると思っています。今は体力づくりの段階です」(大塚氏)
広告や雑誌のビジュアル、紙のカタログなどは「広告代理店や制作会社に依頼するケースももちろんあります」(同)というが、EC関連のコンテンツは自社制作がベースとなっている。「クリエイティブな仕事なので、生みの苦しみはあるし、配信までの時間にも追われますが、コンテンツ制作のノウハウを社内に蓄積できる意義は大きいですね」と、大塚氏は話す。
同社が内製化にこだわる理由は、いくつかある。一つは、いうまでもなく広告宣伝費の削減だ。「ITツールの発達によって、それらを活用すれば、外注しなくても自前でコンテンツを作りやすくなりました。自分たちでも表現ができる時代だからこそ、社内の制作力を高めていくことが絶対に必要だと考えています」(同)
もう一つはデジタルシフトの加速。ECの普及によって、デジタルマーケティングでは、SNSなどを通じた顧客一人ひとりへの個別アプローチが重要性を増している。そうした中、「小売業も、独自情報によって個性を演出し、差別化しなければなりません。商品の露出機会を増やし、タイムリーな販促につなげるためにも、内製化による情報発信が必至なのです」と、大塚氏は説明する。
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