テンセントの時価総額がアリババを抜き中国一に! 躍進の背景と正しい見方
中国最大の時価総額企業を巡る争いは、長い間アリババ(Alibaba)とテンセント(Tencent)の2大巨大IT企業で展開されてきた。企業価値を示す時価総額では、近年はアリババが「中国一」の座にあったが、今年6月に一転、テンセントがアリババを上回りナンバーワン企業となった。本稿執筆時点(7月23日)においてもテンセントの時価総額は5兆3200億香港ドル(約73兆4000億円)で、アリババの5兆2900億香港ドル(約73兆1600億円)をやや上回る状況が続いている。テンセント躍進の理由と、この出来事に対する正しい見方を考察したい。
キラーコンテンツ「WeChat」で圧倒的優位にあるテンセント
最初に両社の中核ビジネスとなる本業部分のユーザー数および市場シェアを確認しておきたい。テンセントのキラーコンテンツであるソーシャルアプリ「WeChat」の月間アクティブユーザー数(MAU)は2020年3月末時点で12億300万人に達し、中国の総人口14億5000万(2019年末時点)の82.9%を占めるに至っている。ソーシャルアプリとしては中国一のMAUだ。ちなみに第2位の「TikTok」は4億人であり、WeChatが老若男女、地域性を問わず広範囲に普及し、いかに中国人にとって不可欠なアプリになっているかがおわかりいただけるであろう。
一方のアリババは、中核となる「天猫(Tモール)」などのEコマース事業合計で7億1100万人(2019年末時点)のユーザー数を抱え、市場シェアは53.5%(出典:中国電子商務研究中心)を有しているが、ライバルである京東(JD.com)や拼多多(ピンドードー)などと依然として激しい競争を展開している。キラーコンテンツにおけるユーザー数および市場シェアの比較では、アリババよりもテンセントが圧倒的な優位性を保っている点は間違いなさそうである。