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新店速報!群馬2号店、ツルヤみどり店にみる売場の進化とは?

6月24日、ツルヤ(長野県/掛川健三社長)にとって群馬県内2号店となるツルヤみどり店(群馬県/みどり市)が開業した。果たしていかなる店か?商品面ではどんな進化がみられ、お客の反応はどうだったのか?オープン日当日朝、同店に足を運んだ。文中の価格表記はすべて税抜き

6月24日オープンしたツルヤみどり店

ツルヤみどり店 オープン朝から大行列

 ツルヤみどり店がオープンしたのは、群馬県1号店であるツルヤ前橋南店から約20km東に位置する同県みどり市の国道50号線沿い。単独店ながら315台という広大な駐車場を有することからも、一般的な郊外型スーパーマーケットとは段違いの売上規模を期待していることがわかる。実際、ツルヤの20206月期の売上高は約967億円で、1店舗あたり30億円近く売っていることになる。ただしこれは、旗艦店で1000坪の広さを持つ前橋南店がオープンする前の売上数字だ。前橋南店は30億円どころではないハイペースで売上を稼いでいるようで、今回オープンしたみどり店にも期待がかかる。

 オープン日は朝9時オープンの予定だったが、お客の行列が多かったためか、9時少し前に開業。コロナ対策もあって、開業当初から入場規制を敷いていた。筆者は850分過ぎに行列に参加。店からだいぶ離れた最後尾に並び、ざっと目視で300人は前に並んでいたが、スタッフの誘導も手馴れており、9時過ぎには入店できた。

 オープン時はまだ駐車場に余裕があり、周辺道路の渋滞もさほどではなかった。一方で一人で買い物に来ているお客は少なく、1グループあたり2~3人で「ツルヤでの買い物を楽しみにきた」お客が大半だった。車のナンバーは前橋南店のオープン日とは異なり、群馬ナンバーが圧倒的に多かった。

ツルヤみどり店のレイアウト

 ツルヤみどり店の店舗面積は大店立地法届け出ベースで3522㎡。標準化しているツルヤは、このみどり店でも売場レイアウトは基本的に既存店を踏襲していた。

 

ツルヤみどり店レイアウト(オープン日は青果側が入り口、ベーカリー側が出口)

 メーンコンコースは青果からはじまり、鮮魚、精肉、総菜、ベーカリーへと流れていくお決まりのレイアウトだ。平場では酒類、日用品、加工食品、和洋日配を展開し、過度な装飾が一切ないすっきりした売場づくりを行っている。また、青果から鮮魚に至る直線上に中通路が設けられていないのが特徴で、鮮魚まではお客をワンウェイで誘導する。

オープンチラシで生鮮だけを訴求する、そのねらいは?

 オープンチラシをみると表面も裏面もほぼ生鮮3品の売り出し情報。特別なものが買える食の専門店ではなく、あくまでも値段が手ごろで普段使いのスーパーマーケットでありながら、独自性の強い商品を販売するという自社の立ち位置をよく理解している。そのことをお客にも強く印象付けるチラシ内容となっている。

 強烈な価格の打ち出しもあって、入り口トップに配置した青果売場でのお客の寄り付きは非常に良かった。2Lサイズ199円のとうもろこし、国産199円のブロッコリー、1499円の台湾産パイナップル、2001パック369円のさくらんぼなどの目玉商品に多くのお客が引き寄せられていた。

 鮮魚では10089円のするめいか、同119円のかつおたたき、同199円、ネタの良さが光る鮮魚売場の寿司などにお客が寄り付いていた。

ベーカリー=ツルヤが定着

 総菜売場とベーカリーコーナーの間にはサンドイッチコーナーを展開。長野市にあるサンドイッチ専門店「サンチ」のフルーツサンド、いちご大福サンド、贅沢いちごミルクサンドなどが並び、店員がしきりにその希少性をアピールしていた。

名物の牛乳パン(99円、セール価格)、くるみバゲット(389円)

 ベーカリーコーナーもお客の寄り付きが非常に良かった。ベーカリー専門店が各種あるなかでも、「ベーカリー=ツルヤ」というイメージが群馬県民にもすでに定着しているようだ。グルマンマルセが製造したパンとインストアで焼き上げたパンの組み合わせは種類も豊富で、おやつから朝食、夕食までさまざまなシーンに合うパンが並ぶ。

 

群馬のMD続々注入 PBなしでも独自性の高い売場を作る方法!

 次に平場の売場をみていきたい。全体的に、長野県のツルヤというイメージをそのままに、群馬県のMD(商品政策)をどんどん追加し、地域に密着した品揃えをしようというバイヤーの意気込みが伝わる。

強化される群馬のMD 左から地場メーカーの絹そうめん、群馬のメーカー製造のPBの玉こんにゃく、上州ぐんまをイメージしたブレンドコーヒーのパック

 日本酒のプライベートブランド(PB)はいずれも長野県の酒蔵が製造したものだが、「上州地酒」コーナーを大きく撮り、赤城山、春名山、谷川岳、吉乃川、聖徳といった銘酒を揃える。乾麺では、同じくPBではないものの、同店のあるみどり市に本部を置く星野物産の「彩り華やか絹そうめん」などきめ細かく地場商材の発掘に努めている。

 また、袋めんの棚割りをみても、売れ筋中心の多くのスーパーマーケットとは一線を画している。千葉県で熱烈な人気を誇る「アラビヤン焼きそば」、長野県のご当地インスタントラーメンの「ボンちゃんラーメン」などが目立ち、必ずしもPBでなくとも、ローカルブランドやナショナルブランドで独自色の強い売場が作れることを教えてくれる。

 和日配では群馬県色がところどころで強く出る。全国生産量の約9割を占める「こんにゃく王国」群馬。PBのこんにゃくも群馬のメーカーに委託したものが豊富に並び、板こんにゃくだけでなく、つきこん、しらたき、玉こんにゃくなどを開発している。

 ツルヤは和日配や加工食品、菓子、冷凍食品などでPB商品が目立つが、実は生鮮品や生鮮由来の商品もPB化してその独自性を際立たせている。

 その例を2つ挙げる。1つ目は青果のアボカドだ。ツルヤ契約農場直送のアボカドは「通常よりも樹上で長く熟成することでコクのあるうまみを引き出してあります」と謳う。サイズも大きく、アボカドでも差別化ができることを教えてくれる。

ツルヤ契約農園直送のアボカド(1個119円)と、特別セールを実施していたPBの無菌米飯(3個パック229円)。まずはお試し価格でPBの良さを知ってもらうことにつとめている

 2つ目が、インストアベーカリーの名物商品「牛乳パン」に塗られているクリームを商品化した「牛乳パンのバタークリーム」だ。ローソンの「プレミアムロールケーキのクリーム」と同じ発想だが、バイヤーの「名物商品の味をもっと家庭で楽しんでほしい」という思いが伝わる。

 全体的には群馬県2号店ということもあり、お客はみな「勝手知ったる」店という具合に、比較的落ち着いた買い方をしていたのが印象的だった。

 

 なお、同店オープンに伴う国道50号線の渋滞はすさまじいものがあり、当日朝10時半ごろにはすでに4㎞ほどの渋滞となっており、同じ50号線沿いにある競合のフレッセイ赤堀店のはるか先まで車は連なっていた。

 ツルヤの群馬戦略は極めて順調に進んでいると言えそうだ。