世界最大級の無印良品で行われている「食」提案のすべて
「スターバックス」など食のテナントを初導入
ここからは、直江津店の食の取り組みについて見ていこう。同店では初の試みとして、カフェチェーンの「スターバックス」、輸入食品を取り扱う「カルディコーヒーファーム」、品質の高いこだわりの和食品を取り揃えた「久世福商店」といった食のテナントを導入した。このうち「スターバックス」は、無印良品の書籍コーナー「M U J IBOOKS」とともに「BOOKS & CAFÉ」を構成しており、無印良品としては最大規模の約3万5000冊を販売する。
これら食のテナントを誘致した理由の1つは、来店頻度の向上だ。「無印良品は、大ファンの方でも来店するのは2週間に1回程度。食の専門店を導入することで来店頻度を高めたい」(直江津店コミュニティマネージャー 古谷信人氏)。
また、直江津店では、160席を備えるフードコート「なおえつ良品食堂」を展開。カレー、ラーメン、丼物、定食、ジェラートなど、世代を問わず気軽に楽しめるラインアップを導入した。
京都山科店ではカレー店以外は地域の専門店がテナントとして入っていたが、直江津店ではすべて直営での運営だ。しかし、一部メニュー開発では地元の専門店のアドバイスを受けたほか、新潟県産の「なごみ豚」など地域食材を使用した料理も提供するなど、地域との協業に取り組んでいる点は変わらない。また、継続して地元の人に通ってもらえるようにリーズナブルな価格に設定。「とん汁ラーメン」や「なごみ豚のキーマカレー」(いずれも税込600円)など、大半が500~800円程度で購入できる。
そのほか、フードコートの隣には「なおえつ良品市場」を展開。上越の旬の野菜や伝統野菜のほか、不揃いや規格外の「わけあって安い」青果も販売する。加えて、上越産の米や発酵食品、乾物、加工食品、地酒など合計約100品目を展開。野菜に関しては、「J Aえちご上越」が運営する農産物直売所「旬菜交流館 あるるん畑」と協業し、商品を仕入れる。
施設全体のバランスを考慮した売場づくり
直江津店は、堺北花田店や京都山科店といった既存の地域との協業店舗とは方向性がやや異なる。これら2店舗は地域との協業をベースとしながらも、生鮮をフルラインで取り扱うなど、あくまで食品の充実に重きを置いていた。それに対し直江津店では、青果や日配品などは一部取り扱っているものの、精肉や鮮魚、総菜などは販売していない。施設内にはすでに地場の食品スーパー(SM)「ピアレマート」があり、「地域の役に立つという目的で出店しているため、SMが困るようなこと(競合する商品を置くこと)はしない」(古谷氏)とのことだ。つまり、食品の充実よりも、地域活性化のために施設全体のバランスを考慮した売場づくりを実施しているのだ。高品質な地場野菜を取り扱うのも、価格訴求型のピアレマートでは販売していないからで、お客から無印良品にない商品の問合せがあれば、施設内のほかのテナントに誘導するという。
売場づくりのほか、コミュニティスペースや移動販売などの施策からは、直江津店が地域活性化に取り組む“本気度”が窺える。同店のコンセプトビジュアルは「田んぼとにしん」。上越ではにしんは食材としてだけでなく、米の肥料としても活用されてきた。直江津店は田んぼに混ぜ込まれたにしんのように、“暮らしの肥料”となりながら地域活性化に取り組む考えだ。