「面倒くささ」を解消したセブンイレブン「手巻きおにぎり」誕生秘話
セブン‐イレブンがおにぎりの販売を本格的に始めたのが、1978年。シートに包まれたのりを開封して手で巻く「手巻きおにぎり」を開発した。家庭のおにぎりは、握った直後に米飯をのりで包む「直巻き」だったので、パリパリとした食感は新しかったに違いない。 直巻きにすると、ご飯が余計に蒸れて細菌数が増える弱点があったため、手巻きおにぎりを開発したのは、販売期限を延ばす意図もあったと推察するが、結果としてコンビニだけが提供する新しいおにぎりが出来上がった。
おにぎりが本格導入された78年には、温度管理ができる大型の「弁当ケース」が導入されている。米飯温度帯(20度)のケースの開発によって、おにぎりや弁当が定温で管理できるようになり、店着後15時間前後の間、店頭販売できるようになった。
74年のセブン‐イレブン1号店「豊洲店」オープン当時の写真を見ると、「京樽の弁当です」と手書きされた貼り紙の下に、パックに詰められた寿司の太巻き、細巻きが並んでいる。75年のファミリーマート四号店「秋津店」でも、太巻き、細巻きが並べられている。 まだ両店ともに、陳列場所は菓子などが置いてある「常温」のゴンドラエンドだ。販売期限の関係上、普通の米飯よりも日持ちがする酢飯が使え、生ものを使用しないで済む、 太巻き、細巻きが品揃えされたのであろう。
開封に失敗しないためのシートの改良も進んだ
手巻きおにぎりは、米や具材の改良が行われるのと同時に、誰もが失敗しない開封方法 がいくつか考案されてきた。記憶に残るのが、三角おにぎりのてっぺんを開封して、中からシートをつまみ上げ、するすると抜いてのりとご飯を合体させる方式(パラシュート型)だろう。
その後も、開封時にのりを破損させずに、ご飯の落下も防ぐべく、シートの改良 が進められた。現在は各チェーンともに共通の、フィルムの先をてっぺんからぐるりと一 周回して、シートを左右に分断する方式が採用されている。
一方の「直巻きおむすび」は、95年に新規発売される。米飯やのりの改良による品質向上、工場の衛生管理技術による販売期限延長など、商品展開に関するさまざまな課題 をクリアして商品化された。昔、家庭でつくっていたおにぎりへと原点回帰した格好だが、コンビニのおにぎりに慣れ切った当時、もはや家庭でおにぎりを握る習慣がなくなり、 「お母さんが握ったおにぎり」という、ある種の懐かしさを持って迎えられた。