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ジャパニーズウイスキーはスーパーマーケットで買え!?

 「山崎」、「響」、「竹鶴」。業界ではプレミアムウイスキーと分類される国産の有名ブランドですが、今やすっかり高嶺の花です。というより、店頭であまり見かけません。幻の・・・と形容するしかないほどに。 
 試みにアマゾンで検索すれば、「山崎」(ノンエイジ)で9,000円前後! 2012年の発売時は参考価格4,200円だったのに。「竹鶴ピュアモルト」、メーカーHPには今も参考価格3,000円と書かれていますが、4,000円を下ることはまずありません。希少性ゆえのプレミア価格が常態化しています。
 売ってもいないけど、あっても手が出せない・・・。原酒不足が解消されるまであと何年も我慢・・・。仕方がありません。ただ、もしも近所にスーパーマーケットの新店がオープンしたら、国産プレミアムウイスキーを発売当時の値段で買える、そんなタイムマシン体験ができるかもしれません。

いまや幻となりつつある国産高級ウィスキーだが、手に入れる意外な方法がある

消費量は10年で2倍に

 2018年に国内で消費されたウイスキーの数量は、08年対比で2倍に増えました。この08年というのは、現在のウイスキー興隆につながる画期です。この年、業務用市場でサントリーによる「角ハイ」提案が本格化しました。「ハイボール」ブームの幕開けです。食後の酒から食中に飲用シーンが広がり、ウイスキーの消費量は増えました。

 08年の景況も追い風になりました。9月のリーマンショックで世界的な景気後退に突入、生ビールよりもリーズナブルなハイボールは、経済的にも「選ばれる商品」になっていきました。飲食店での体験が家庭に持ち込まれ、09年にはハイボール缶の展開も本格化します。

 ハイボールで飲用者の裾野が広がると、価格帯を問わず総じてウイスキー需要は高まりました。NHK朝ドラで「マッサン」が放映された14年秋から翌年にかけてが国産ウイスキーブームの頂点で、以降は原酒不足がクローズアップされるようになります。国産の不足をバーボン、スコッチ等で補い、前述のように18年までウイスキーの消費量は右肩上がりで推移しています。

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新店オープンはお祭り!だからねらい目

8割減のトラウマ

 しかし国産のプレミアムクラスの流通量は減っています。かつては「山崎10年」や「響12年」のようにエイジごとに商品化されるのが一般的でしたが、もはや一昔前です。「●●12年」とは、最低でも12年寝かせた原酒だけで構成した商品のことです。そのような制約での安定供給は困難と、多くの国産エイジド品が終売になりました。

 もともとノンエイジ商品は、熟成期間の縛りをなくすことで商品設計の自由度を高め、リーズナブルなプレミアムウイスキーとして10年代前半に登場しました。ところが供給の逼迫により、かつてのエイジド品並みの値段で、しかも希少なことは前述の通りです。

 このような事態を招くほどの原酒不足が、なぜ起こるのでしょうか? ウイスキー原酒は熟成に時間を要するといっても、それは計画性の問題のように思えます。きちんと将来を見越して仕込んでおけば・・・、と言いたいところですが、ウイスキーほど将来を見越すのが難しい酒類はないかもしれません。10年以上も原酒を寝かせるとして、そんなに先の需要予測は困難です。

 ましてウイスキーの消費量については、歴史的に恐ろしい経験があります。1983年をピークに、07年までの四半世紀で消費量は2割に落ち込みました。2割減ではありません。8割減です。この現象を古生物学者なら「大量絶滅時代」と名付けるでしょうし、軍事史家なら「壊滅」と表現するでしょう。そうした時代を経たからこそ、今の原酒不足があるのです。

「国税庁 酒類課税数量の推移」をもとに筆者作成

新店オープンは、お祭りです

 今では希少かつ高嶺の花のノンエイジ品が、新規オープンのスーパーマーケット店頭には棚いっぱいに並びます。それも発売当時のお値段で。ここ1、2年の傾向ですが、初めて気付いたときは目を丸くしたものです。

 すべての新店でそうとは言い切れませんが、チェーン展開している多くの店で広く確認しています。チラシにも掲載されません。お一人様一点限りの条件付きですが、夕方には完売します。そりゃそうです。

 国産プレミアムの放出は、新店オープンに花を添える取引先のはからいでしょう。スーパーマーケットに限ったことではありませんが、オープンセールはその店で最大最強のお祭り企画です。ただ安いだけではありません。オープンセール後には見かけなくなるような、例えば松阪牛だったり、毛ガニだったりが並ぶこともあります。

 スーパーマーケットといえば日常普段の買物をする場ですが、オープンだけは違います。まさにお祭りで、ウイスキーに至っては「時間旅行した?」と錯覚しそうなミラクルだって起きます。