ロピア(神奈川県/高木勇輔代表)にとって関西10店舗目となる兵庫県神戸市に「ロピア新長田店」(以下、新長田店)が5月17日にオープンした。前編では同店の青果・鮮魚・総菜売場をレポートした。後編では精肉や加工食品、酒類売場をレポートするとともに、商圏の競合状況を確認し、近隣の競合店との価格比較からロピアの価格政策を見てみたい。
調査日:6月5~7日 ※本文中の価格はすべて本体価格
恐るべき販売力の精肉売場
精肉売場は牛肉・鶏肉は店内加工、豚肉はセンター納品が基本とする、既存店と同じスタイルで、右サイド壁面24尺で牛肉の焼肉、ブロックなど、正面壁面57尺で牛肉ステーキ、豚肉、ひき肉を配置する。
調査日はチラシで「みなもと牛まるごと大特売!!」と銘打ち、ロピアオリジナルの「みなもと牛」の「サーロインステーキ用」「切り落とし焼肉用」(各100g398円)で提供。豚肉では、オリジナル三元豚の「ロース切り落とし」(100g99円)、鶏肉では「桜島どり」の「手羽先特大パック」(100g39円)など競合店を圧倒する低価格で提供する。牛
全体的に堅実な商品構成で、調査日は15時過ぎには売場全体が品薄状態となっており、閉店間際にはほとんどの商品が品切れだった。競合店にとっては恐るべき販売力である。
早くも“関西の空気”に慣れ?
続いて日配売場。関西進出したばかりの頃は麺や納豆、ヨーグルト、チーズなど日配で強烈な価格訴求を展開することが多かったが、直近の新店ではそうした目玉商品は少なくなった印象だ。冷凍食品もロピア新店ではおなじみの「一律6割引きセール」ではなく、個々の商品を5割~6割引きで提供しているようだ。
加工食品、菓子、酒類は適切なフェースアップがなされており、欠品も少なく、気配りのきいた適切な売場管理がなされているようだ。価格政策では、売れ筋を中心にEDLP(エブリデイ・ロープライス)で志向していると思われる。
商品面では「京都ヨドバシ店」(京都府京都市)で導入した韓国食材コーナーは設置していたが、同じく京都ヨドバシ店で始めたクラフトビールコーナーは導入していなかった。非食品は品揃えを売れ筋に絞り込んでラインナップしていた。
2020年9月の関西進出から約1年8カ月が経過し、10店舗体制となったこともあって、“関西の空気”に慣れてきたのだろうか、新長田店の売場にはどこか落ち着きを感じた。どの部門も力が入りすぎておらず、ロピア本来の強さがストレートに表現できている売場であるように思う。
「新長田」駅周辺はスーパーの激戦区!
さてここからは新長田店周辺の競合状況を見ていきたい。
JR「新長田」駅周辺は食品スーパーの激戦区で、新長田店から最も近くで競合するのは、直線距離で約200mの場所にある「スーパーマルハチ新長田店」だ。同店は「アスタプラザウエスト」の地下にあり、新長田店のある「アスタくにづか3番館」とは地下通路でつながっている。
スーパーマルハチを運営するマルハチ(兵庫県/栗花正雄社長)は、阪神地区に40店舗を展開しており、とくに生鮮を中心に支持を集めている。スーパーマルハチ新長田店も生鮮食品を買い求めにきた固定客と思われるお客が多く、ロピア進出の影響はさほど受けていないように見えた。
スーパーマルハチ新長田店からさらに南に進んだ、新長田店から約350mの場所にはあるのが「西友新長田店」だ。「新長田」駅から徒歩1分の「東急プラザ新長田」の地下1階に入る同店は、売場管理もよくできており、価格もロピア対策がなされているようだったが、客入りを見るに多少影響を受けているように筆者の目には写った。
「新長田」駅から徒歩で約10分、新長田駅から直線距離で約900mの場所には「ライフ西代店」もある。前出の2店舗と比べるとやや距離が離れていることもあって、特別な対応は見られなかったが、一部の売れ筋NBを取り扱わないなどの試みも見られ、多少はロピア進出を意識しているのかもしれない。
価格比較で浮き彫りとなったロピアの安さ
そのほか商圏内には関西地盤の小型ディスカウントストア「サンディ」などもあるが、本稿では「ロピア」「西友」「ライフ」「マルハチ」(以下、店名は省略)の食品スーパー4店舗で価格比較を行ってみた(図表)。
図表●「新長田駅」周辺4店舗の価格比較 筆者作成
※価格指数はロピア新長田を100としたときの数値、●色マーカーは広告商品
●日配品・冷凍食品・アイスクリーム
チェーン名 | ロピア | 西友 | ライフ | スーパーマルハチ |
---|---|---|---|---|
店舗名 | 新長田店 | 新長田店 | 西代店 | 新長田店 |
牛乳(無調整牛乳)1000mℓ | ¥159 | ¥175 | ¥189 | ¥178 |
明治・ブルガリアヨーグルト プレーン400g | ¥139 | ¥135 | ¥128 | ¥138 |
豆腐メイン商品 | ¥59 | ¥50 | ¥58 | ¥58 |
納豆3個パック(最低価格) | ¥67 | ¥68 | ¥79 | ¥78 |
敷島製パン・パスコ超熟6枚切 | ¥135 | ¥138 | ¥159 | ¥142 |
雪印メグミルク・ネオソフト300g | ¥178 | ¥185 | ¥218 | ¥228 |
味の素冷凍食品・ギョ―ザ12個入り | ¥159 | ¥192 | ¥178 | ¥198 |
うどん玉1個 | ¥69 | ¥48 | ¥39 | ¥23 |
ハーゲンダッツジャパン・ミニカップバニラ110mℓ | ¥198 | ¥210 | ¥238 | ¥228 |
合計(本体価格) | ¥1,163 | ¥1,201 | ¥1,286 | ¥1,271 |
価格指数 | 100 | 103 | 110 | 109 |
●加工食品・飲料・菓子
チェーン名 | ロピア | 西友 | ライフ | スーパーマルハチ |
---|---|---|---|---|
店舗名 | 新長田店 | 新長田店 | 西代店 | 新長田店 |
マルコメ・料亭の味(だし入り)750g | ¥239 | ¥312 | ¥358 | ¥288 |
日清食品・カップヌ―ドルしょうゆ | ¥165 | ¥148 | ¥168 | ¥138 |
サンヨー食品・サッポ一番みそラーメン5袋 | ¥319 | ¥358 | ¥358 | ¥328 |
ハウス食品・バーモントカレー230g | ¥168 | ¥195 | ¥228 | ¥198 |
キユーピー・深煎りごまドレッシング380mℓ | ¥333 | ¥388 | ¥398 | ¥368 |
ヤマサ醤油・昆布つゆ1000mℓ | ¥194 | ¥238 | ¥298 | ¥258 |
Mitskan・味ぽん600mℓ | ¥222 | ¥258 | ¥238 | ¥265 |
伊藤園・お~いお茶 緑茶2ℓ | ¥139 | ¥138 | ¥128 | ¥148 |
ロッテ・チョコパイ9個 | ¥259 | ¥240 | ¥258 | ¥298 |
合計(本体価格) | ¥2,038 | ¥2,275 | ¥2,432 | ¥2,289 |
価格指数 | 100 | 112 | 119 | 112 |
●酒類
チェーン名 | ロピア | 西友 | ライフ | スーパーマルハチ |
---|---|---|---|---|
店舗名 | 新長田店 | 新長田店 | 西代店 | 新長田店 |
月桂冠・つき2000mℓ | ¥809 | ¥830 | ¥878 | ¥838 |
三和酒類・いいちこ25度1.8ℓ | ¥1,299 | ¥1,378 | ¥1,458 | ¥1,380 |
サントリー・角瓶700mℓ | ¥1,200 | ¥1,248 | ¥1,400 | ¥1,248 |
アサヒビール・スーパードライ350mℓ6缶 | ¥945 | ¥968 | ¥998 | ¥985 |
サントリー・金麦350mℓ6缶 | ¥620 | ¥658 | ¥658 | ¥635 |
合計(本体価格) | ¥4,873 | ¥5,082 | ¥5,392 | ¥5,086 |
価格指数 | 100 | 104 | 111 | 104 |
●青果
チェーン名 | ロピア | 西友 | ライフ | スーパーマルハチ |
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店舗名 | 新長田店 | 新長田店 | 西代店 | 新長田店 |
トマト1個 | \290(6個) | ¥98 | ¥100 | ¥398(4個) |
キュウリ1本 | \100(3本) | ¥48 | ¥58 | ¥48 |
キャベツ1玉 | ¥120 | ¥198 | ¥198 | ¥198 |
レタス1玉 | ¥100 | ¥128 | ¥158 | ¥128 |
ほうれん草1束 | ¥100 | ¥158 | ¥158 | ¥158 |
ブロッコリー1房 | ¥100 | ¥198 | ¥198 | ¥178 |
もやし200g | \58(400g) | ¥28 | ¥29 | ¥38 |
比較対象としたのは、「日配・冷凍食品・アイスクリーム」「加工食品・飲料・菓子」「酒類」「青果」と大きく4カテゴリーの売れ筋30品目。青果は取り扱い商品の量目が異なるため、単純比較ができなかったが、そのほか3カテゴリーすべてでロピアは最安となった。
日配は、西友がロピアに迫ったものの、「味の素冷凍食品・ギョーザ12個入り」の価格差が大きく、カテゴリー合計ではロピアより38円高くなった。ライフとマルハチも一般的なスーパーと比べると十分安い価格だが、ロピアの安さが圧倒的だった。
加工食品は大きく差がつき、最も高いライフとロピアで約400円の価格差があった。酒類も同様にロピアとライフで500円以上の差が出たが、これは「サントリー・角瓶700mℓ」の価格差が大きく影響した。
前述の事情から単純比較はできないものの、ロピアの安さが際立った。開店セールの価格と思われるが、とくにレタス、ブロッコリー、ほうれん草の100円は驚異的な価格であり、消費者にとっては大きな魅力と言っていい。
最近は「利恵産業」「丸越醸造」といった傘下企業が製造するユニークなオリジナル商品や、鮮魚での寿司・刺身の対面コーナーなど、商品政策面で進化が見られるロピアだが、今回の調査ではその価格訴求力は健在であることが確認できた。他店を寄せ付けない強烈な安さの打ち出しによって商圏を一気に掌握する手法で、今後も関西エリアでシェアを拡げていくことだろう。
(店舗概要)
開店日 2022年5月17日
住所 兵庫県神戸市長田区久保町5-1-1 アスタくにづか3番館
営業時間 9:00~19:00
駐車場 約400台(SC全体)