アクシアル リテイリング(新潟県/原和彦社長:以下、アクシアル)傘下の原信(同)は5月28日、長野県安曇野市に「原信安曇野店」(以下、安曇野店)をオープンした。地元デベロッパーが開発する近隣型ショッピングセンターに、「ニトリ」「ケーズデンキ」「コメリ」などのテナントとともに出店している。長野県への出店は6店目、同県の中信地域への出店は初となる。
コロナ禍2年目も
売上が実質、過去最高
今回とくに注目したいのが、安曇野店の総菜売場だ。アクシアルの2022年3月期連結決算の売上高は2464億円、営業利益は103億円。今回、期首から「収益認識に関する会計基準」などが新たに適用されたため、前期比は発表していないが、売上高は実質過去最高で、営業利益、経常利益、純利益はいずれも過去2番目の水準となっている。
21年度は前年度の“コロナ特需”による反動減の影響を受けた企業が多かったなか、アクシアルはなぜこのような好業績を達成することができたのか。
原和彦社長が主な要因の1つに挙げるのが、総菜部門の好調である。21年度は、前年度よりも徐々に人の動きが増えて内食需要が落ち着き、その一方で即食需要が回復を見せた。こうしたなか「当社がずっと追求してきたおいしさにこだわった商品開発が、お客さまからの支持獲得につながった」と述べている。
では、実際に総菜部門ではどのような売場づくり、商品開発を行っているのか。アクシアルの最新店である「原信安曇野店」を例に見ていこう。
鉄板焼きコーナーが並んだ
ダイナミックな売場
まず、安曇野店の総菜売場で印象的なのは、ライブ感のある売場づくりと、品揃えの豊富さだ。壁面に大きなガラス窓を採用し、売場から調理シーンを見せることで、店内調理の安心感や出来たて感を演出する。
売場から見えるように商品を鉄板で焼き上げるコーナーは、いまや多くの食品スーパーで見かけるが、安曇野店は通常の「てっぱん屋」コーナー以外に、店頭で扱う精肉を調理する「肉のてっぱん屋」コーナーも併設し、よりインパクトのある売場づくりを実践している。
圧倒的な品揃えの
「魚菜屋」コーナー
「肉のてっぱん屋」をはじめ、店内で扱う素材を使った総菜が充実しているのも安曇野店の特徴だ。とくに、原信が強みとする鮮魚を生かした魚総菜の「魚菜屋(うおさいや)」コーナーを設置。魚総菜は、最近は多くの食品スーパーでも提供するようになったが、安曇野店では、他チェーンではあまり見られないメニューも多く並び、圧倒的な品揃えを実現している。
こうした肉総菜や魚総菜の存在によって原信の総菜全体のラインアップは広がっており、その数は全体で400SKU以上にも上るという。
「家飲み」を促す
ユニークな商品
家飲み需要に対応した商品開発が進んでいるのも特徴だ。たとえば、お酒のつまみになるとともに、野菜も摂取できるカップ入り総菜を「ちょいベジおつまみ」シリーズとして販売。コンビニエンスストアで近年、開発が進んでいるカップ入り総菜からヒントを得て開発したもので、食品スーパーの強みである、鮮度の高い野菜を豊富に使用してコンビニと差別化を図る。
また総菜売場では、自家製燻製の「SMOKED DISHES」コーナーを設置。店内でスモークしたししゃもやあゆ、たこ、卵などを10SKU以上を揃えている。商品の動きはよく、また販売側としても、店内加工に手間がかからず、2~3日保存も可能でロスが出にくいという利点がある商材だ。
「ゼロ肉」で
代替肉を提案
「健康」の提案にも原信ならではの特徴がある。
安曇野店では、健康提案の一環として、総菜を含む生鮮4部門が部門横断型で開発するサラダを集積した「365×3 サラダライフコーナー」を設置している。開店日は「ホタテと海老の彩りフルーツサラダ」「だし香る里芋のポテトサラダ」といった、ユニークな商品が多く見られた。
また弁当売場では、大豆ミートを使用したメニューを、「ゼロ肉」というキャッチコピーを掲げて訴求している。以前は「野菜たっぷり もっと野菜を」というフレーズで提案していたが、大豆ミートや代替肉の認知度が高まってきたことから、購入を促せる切り口として、同店から新たに採用している。
野菜を使った
スイーツも登場!
最後に、オリジナルスイーツにも注目したい。原信は近年、嗜好性が高く、「リラックス」「癒し」を提供できる商材としてスイーツの開発に力を入れてきた。安曇野店では、青果部門の素材を使用したタルトを初めてコーナー化。その隣では、果実や、野菜であるトマトを使った杏仁豆腐も提案し、売場で注目を集めていた。
このように原信は、コロナ禍でとくに消費傾向が大きく変わった総菜において、変化に迅速に対応して、かつ積極的にトレンドも取り入れ、即食ニーズを開拓できるような商品開発を実践している。この姿勢こそ、アクシアルの好業績を後押ししていると考えられ、その他の食品スーパーにとっても学びの多い取り組みと言えよう。