ネットとリアルの融合、
デジタル・マーケティングの革新、
O2O、ビッグデータ分析の最前線
カスタマー・エクスペリエンスを実現するリアルタイム・リテーリング

2013/07/02 00:00
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HANAクラウド上のSPMで高精度かつパーソナライズされたマーケティングが可能

 

 こうした仕組みを実現しているのが、「SAPプレシジョン・マーケティング(SPM)」である。SPMは、スマホアプリを起点にした1to1マーケティングのデリバリー・プラットフォームであり、クラウド上の超高速インメモリ・データベース「SAP HANA」を用いて提供している。顧客の「プロフィール情報」に加えて、店舗内か店舗の近くかといった「位置」情報、朝/昼/夜や平日/休日などの「時間」、スマホに表示された情報に対する反応から得られる「今現在の関心事」の4つの要素を組み合わせることで顧客のコンテクストを高精度かつリアルタイムに把握することが可能だ。

 

 オファーへの反応から、今現在の関心事を把握できるので、プロフィール情報がなくても高いパーソナライズ精度を維持できるし、それを反映することでオファーを一方通行ではなくインタラクション(双方向)化できる。

 

 

 

 もうひとつの事例はカナダのモントリオール交通局(STM)が導入したスマホアプリ「STMメルシー」のケース。STMは交通系ICカードを導入しており、そのIDを「STMメルシー」に入力してログインすることで、顧客がいる場所の近くや降車予定駅周辺のショップやレストランなどの情報を個人宛に配信する。モントリオール市内の1240の店舗やイベントはそれぞれのオファーを設定しているが、顧客の位置や嗜好に合わせて、最適なオファーが送信される仕組みだ。

 

 乗客にとっては自分の属性や好みに合ったオファーを受け取り、お得に買い物ができる。広告主や店舗は、高精度にターゲッティングされたオファーにより駅広告より効率よく集客できる。またSTMは利便性で乗客を増やし、SPM利用料や駅ビルの集客拡大による売上拡大など非運賃収入を増大することにつなげている。

 

 こうした事例は今後も確実に増大していく。これらのほかにも米ではガソリンスタンド事業者がスマホをカーナビとして利用するアプリを無料で提供し、現在位置の近くのガソリンスタンドを表示して来店誘導するために使用したり、地方銀行が地域の店舗を顧客の嗜好に合わせて紹介するアプリを提供するなど、導入事例が増えている。

 

日本でのパイロット実施企業を募集

 

 こうしたSPMの事例と比較して、一般的なO2Oはスマホの機能のごく一部しか使用していない。一般的なO2Oは来店誘導を最大の目的としているが、「デジタル・マーケティング基盤」は来店の前後や来店中を含めた24時間の顧客リレーション作りが目的だ。しかもターゲッティングは1to1であり、提供された情報への反応の違いによりリアルタイムにオファーを変えていくことも可能になる。

 

 SAPでは今後、日本でもSPMの導入事例を作りたいと考えている。そのために興味のある企業とともに、「デジタル・マーケティング基盤」のパイロット事業をまず展開していく考えで、参加する企業を募集していく方針だ。

 

[関連リンク]  SAPプレシジョン・マーケティング(SPM)ブログ記事
■外出中のお客様に「全自動でおもてなし」を提供するモントリオール交通局

 


 

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