ウェットフードやおやつが伸長 ペットと飼い主の絆を深めるトータル提案
コロナ禍以降、ペット飼育頭数の増加に伴い成長してきたペット関連のマーケット。直近は犬用、猫用ともに嗜好性の高いウェットフードの割合が伸びているほか、コミュニケーションツールとしてのおやつ用カテゴリーが犬猫ともに大きく伸長している。
ドライフードが7割を占めるも、直近はウェットフードが伸長
一般社団法人ペットフード協会の「全国犬猫飼育実態調査」によると、2024年の全国推計飼育頭数は犬が679万6000頭、猫が915万5000頭となった。犬は、飼育率が昨年から減少するも飼育頭数は下げ止まりとなり新規飼育頭数、新規飼育意向率は横ばいの傾向が続く。
一方の猫は、飼育頭数・飼育率が横ばいで推移。新規飼育頭数は下げ止まりとなり、新規飼育意向率は前年と同水準で推移している。

ペットフードにはドライフードに加え、缶詰やパウチなどのウェットフード、年齢別、犬・猫種別対応など、さまざまなタイプがある。犬猫ともに多くのユーザーが朝晩の食事用として市販のドライフードを利用しているが、近年では通常の食事用とは別に「おやつ」をあげる人が増えてきている。
ペットの主食におけるフードタイプ別構成比を見ると、犬用については「市販のドライタイプ」が70.9%、「市販のウェットタイプ」が10. 8%、「市販のソフトタイプ」が7.6%と続く。猫用については「市販のドライタイプ」が72.8%を占め、「市販のウェットタイプ」が21.2%、「療法食」が4.2%と続く(すべて平均値)。
いずれも前年と比較し、ドライフードの割合が落ちてウェットフードが伸びていることから、水分補給や嗜好性を考え、手に取る飼い主が増えていることがわかる。
続いて、富士経済の「ペットフード・ペットケア/生活用品」の国内市場調査によると、24年の同市場は各カテゴリーの伸長により前年比3.7%増となった【図表①】。
昨今の物価上昇により消費者のコスト意識が高まっていることから、メーカーは値頃感のあるマルチパック商品の展開や付加価値商品の開発に注力。25年以降もプレミアムフードやスナックを中心としたペットフードの伸びや、ペットケア用品とペット生活用品の堅調な需要により、市場は小幅ながら拡大が続くとみられる。
素材にこだわるおやつや牛乳ウェットフードに注目
ここからKSP-POSデータによる25年1月から6月のカテゴリー動向を見ていく。
「いぬ・スナック」の売上シェアランキングを見てみると、1 位にはペティオの「Petio かわいくたべちゃう!ササミ 7本」が入った【図表②】。
同品は、低脂肪な鶏ササミをロール形状に仕上げた犬用おやつのロングセラー。弊誌25年2月15日号掲載の「2024年春・夏売上伸長率ランキング」で、「いぬ・スナック」伸長率No.1※となっていたが、25年1月~6月の期間でも大きくシェアを伸ばしている。ペティオでは今秋、スティック形状のデンタルガム「かわいくたべちゃう!デンタルファイバー」を発売し、ブランドの拡充を図っていく。
また、ささみなどのおやつ関連以外では、ドギーマンハヤシの「ドギーマン わんちゃんの国産低脂肪牛乳」(11位)および、「わんちゃんの国産牛乳7歳からのシニア用」(13位)、「ドギーマン わんちゃんの国産牛乳(14位)が、いずれも前期比で20%以上伸長している。
ペットは通常の牛乳を飲むと、軟便が出たり下痢を起こしたりする場合があることから、同品は製造過程で乳糖を完全に分解し乳糖ゼロに仕上げており、ペットに安心して与えることができる。
続いて「ねこ・ウェット」の売上シェアランキングを見てみると、1位にシジシージャパン「CGC キャットかつお&まぐろささみ」が入った【図表③】。
伸長率で見ていくと、9位のアイシア「国産健康缶パウチ 水分補給 まぐろペースト」、11位のネスレ日本「モンプチプチリュクス カップ まぐろ」、13位のいなば食品「焼かつおディナー かつお節・ほたて貝柱入り」の3品が、前期比40%以上増とシェアを大きく伸ばしている。
キャットフードについても近年、素材で選ぶ飼い主が増えている。はごろもフーズは、素材と水と寒天などを使い素材の旨味を最大限に生かした「無一物」シリーズを展開。今期はユーザーからの声を受け、スティックタイプの猫用おやつ「無一物 舌福」を発売した。ペティオもかつおとまぐろのほぐし身を贅沢に使用した、素材の旨味が特長の猫用ウェットフード「魚まろ」をこの秋投入する。
バラエティ感のある品揃えで、楽しく選べる売場提案へ
以前は屋外で飼育することも多かった犬猫は近年、室内飼いが主流となっている。また、犬については小型犬種の頭数も増加傾向にあることから、マンションなどの集合住宅中心の駅前立地や都市部であっても、飼育頭数は決して少なくはないだろう。駅前立地や都市部で生活する飼い主にとって、ペットフードの最も身近な購入先は、徒歩でも立ち寄りやすいスーパーマーケットということになる。
全国犬猫飼育実態調査によると犬は3割弱、猫については4割弱の飼い主が、「スーパーマーケット」でペットフードや用品を購入していると回答しており、スーパーマーケットでも多様化するペットのニーズに応える売場づくりをすることができれば、既存顧客の満足度向上だけでなく、新たな顧客層の獲得にもつながるだろう。
ペットを飼育している生活者にとって、毎日与えるペットフードは必要不可欠な商品だ。とくに朝夕に与えるドライフードやウェットフードは、ブランドや味種を固定していることが多く、一度購入すると毎回同じ店舗で購入するロイヤルユーザーとなるチャンスを秘めている。
ペットフードは、味わいや容量などによりブランドごとのアイテム数の多いカテゴリーだ。ペットによって好む味がまちまちであるため、ユーザーにとって価格以上にペットが好む商品が置いてあるかが重要な指標であり、そのためには種類が豊富でバラエティ感のある売場づくりが必要になる。
とくに需要が伸びているおやつ系の商材は定番棚だけでなく多箇所展開を行うことで気づきを与え、購入金額と買物点数アップにつなげていきたい。
※KSP-POS(食品SM)に基づき弊社にて集計。2024年4月から9月までの金額増減率でランキングを抽出。金額構成比1%以上の商品が対象(CGC商品は除外)。対象期間の前年4月までに出現のない商品は除外










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