味への信頼高まる!インフレで劇的に進化する米小売の食品PB競争

岩田 太郎(在米ジャーナリスト)
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ウォルマートが新PBを投入!

 米小売業界ニュースサイトのスーパーマーケットニュース(Supermarket News)が5月21日に伝えたところによると、2024年4月の生鮮肉の価格は1ポンド(454グラム)当たり平均4ドル64セント(約727円)と対前年同月比4.1%増、3年前の同月比では14.4%増となるなど、食品価格は高止まりして家計を圧迫している。

 こうした環境でウォルマート、ターゲット、クローガー(Kroger)などの大手小売は、食品PBの生き残り戦略として、すでに信頼を勝ち取った低価格路線やプレミア化に加え、新たな差別化を打ち出しつつある。

 ウォルマートは2024年4月に新たな食品PBである「ベターグッズ(Bettergoods)」を立ち上げた。乳製品・冷凍食品・パスタ・スープ・スナック・飲料・コーヒーなど300品目で構成されるベターグッズは、同社が1993年に発売した食品PB「グレートバリュー(Great Value)」と比較して、「より若く、より裕福な層に訴求する」(PB担当のスコット・モリス副社長)要素を前面に打ち出していることが特徴だ。

 ベターグッズでは、植物由来やグルテンフリー、抗生物質の不使用、人工香料や人工甘味料の不使用、さらにシュガーフリーなど、オーガニックやナチュラル志向をアピールしており、高級生鮮チェーンである米トレーダージョーズ(Trader Joe’s)や米ホールフーズマーケット(Whole Foods Market)から顧客を引き付けることを意識して開発されたことは明らかだ。

 ベターグッズの価格帯は2~15ドルで、およそ7割が5ドル未満と、「健康志向だが安い」のが特徴だ。また、植物ベースのチーズ代替品を揃えるなど、従来のグレートバリューにはない新しさを演出している。

krblokhin/iStock

激化する米小売の食品PB競争

 このようにPB食品は、インフレ下における単なるNB代替としてのみならず、味や素材にこだわることで顧客の信頼を獲得し、NBから一定のシェアを奪いつつあると言えよう。しかし同時に、物価高の中でPB同士、つまりチェーン同士の競争も激しくなっている。

 ウォルマートのライバルであるターゲットは5月20日、プレミア感で評判の食品PB である「エバースプリング(Everspring)」や「グッド・アンド・ギャザー(Good & Gather)」の1500品目を含む合計5000品目を、夏季限定で値下げすることを発表した。

 グッド・アンド・ギャザーの無塩バター1ポンドが3ドル99セントから3ドル79セントへ、同じくグッド・アンド・ギャザーのオーガニックほうれん草の5オンス袋が3ドル29セントから2ドル99セントなど、小幅な値引きではあるが、PB食品1500品目をカバーすることで「塵も積もれば山となる」効果をもたらすというわけだ。

 こうした新機軸で勝負するPB食品は、近年NBで多く見られるようになった、商品の価格を変えないままその内容量を減らす(シュリンクさせる)「シュリンクフレーション」に対する利点としても有効だ。

 翻って、米ファストフード業界では、度重なる値上げに対する一般消費者の息切れで、米マクドナルド(McDonald’s)や米バーガーキング(Burger King)などファストフードチェーンによるセットメニュー値下げ競争が起こっている。“インフレの避難所”である食品小売のPBでも、値下げ競争がより顕著になる可能性はあるだろう。利幅がよいとされるPB食品であるが、消費者の景況感が回復するまでは、プライスカットによる競争激化は避けられないだろう。

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