小売チェーンの豆腐コーナーで存在感増す「豆腐総菜」、ヒットの理由は?
食品スーパーの豆腐コーナーといえば、「絹」「木綿」が主力商品であるのが一般的だが、近年、「豆腐総菜」という新たなカテゴリーが存在感を大きくしている。このムーブメントをけん引するのが豆腐メーカー大手の相模屋食料(群馬県前橋市/鳥越淳司社長)。同社は次々と斬新な商品を市場に投入するとともに、「おとうふ」そのものの価値向上をめざしている。豆腐総菜を生み出した立役者でもある同社の鳥越社長に、豆腐総菜に注力してきた理由とその成果、業界への期待と展望を聞いた。
「おとうふの可能性は無限大」
従来、食品スーパーの豆腐コーナーは、「絹」「木綿」「油揚げ」が定番商品として並んでいた。それが今、「豆腐総菜」という新カテゴリーが台頭し、日配などの棚を侵食するかたちで売場が広がっている。その立役者とも言える存在が、豆腐メーカー大手の相模屋食料だ。同社で代表取締役社長を務める鳥越淳司氏は、「10年ほど前は存在しなかった新しいカテゴリーができ、今や60億~70億円規模の市場に広がっている。これは業界にとって大きなチャンス」と力を込める。
付属のトレーに「おとうふ」と調味タレを入れてレンジで温めれば簡単に一人用のおとうふメインの鍋料理 ができあがる「ひとり鍋」シリーズ、「うにのようなビヨンドとうふ」「BEYOND TOFU ピザ・シュレッド」など意外性のある「BEYOND TOFU」シリーズ。数々のヒット商品を生み出してきた同社だが、その狙いはまさに「尺数を広げること」にあったという。
従来の絹豆腐、木綿豆腐といえば、食品スーパーの店頭で安さを打ち出すための商品というのが一般的だった。業界内には「豆腐はダウントレンド」という雰囲気が漂い、新商品を提案しても食品スーパー側からは陳列できるスペースがないことを理由に断られることが多かった。これに対して鳥越氏は、「棚がないなら作ればいい」と、豆腐総菜カテゴリの開拓に乗り出した。総菜となれば、売価も跳ね上がる。
「おとうふは、ものすごいポテンシャルを持っている。その可能性は無限大だ。面白い商品を作って提案すればお客さまは見てくださる。今では新商品を出すたびに食品スーパーさんも注目してくれるようになった」(鳥越氏)※鳥越社長のこだわりにより、本人の発言はすべて「おとうふ」としている
もともと豆腐は地域性の強い食品だが、豆腐総菜は地域性に左右されにくく、全国の食品スーパーに展開しやすい。また、ヘルシーで手軽に食べられる「ひとり鍋」シリーズのような豆腐総菜は、絹豆腐や木綿豆腐を手に取ることの少なかった購買層を惹きつけた。
「絹、木綿の主な購買層は、50~60代以上だが、『ひとり鍋』シリーズのメイン購買層は40代女性が多く、20代女性、30代女性と続く。最近では男性にも支持されるようになってきた」(鳥越氏)。