成城石井バイヤーが海外展示会で見せた本気 「ナポリタンチョコレート」輸入秘話
「その意味では、やっぱり驚かれます。これだけの種類のものを通年で並べている店は、あまりないんです。もちろんフランスに行けば、フランスのチーズがたくさん並んでいる店はあります。でも、いろんな国のものが、あれだけの品揃えで並んでいるというのは、世界にない」
海外のメーカーからも、「本当にこんな売り場があるのか」という驚きの目つきで見られるという。
「そうすると、こんな売り場だったら、自分たちが作った商品を並べてみたいな、と相手の反応がまったく変わってくるんです」
今でこそ、成城石井は徐々に世界で知られ始めている。しかし、10年前は違った。バイヤーとしては、ここで相手の心を掴むことは、とても大事だったのだという。
ダウントレンドだったチョコレートが上向く
バルクで大量に購入し、日本で包装することは、この展示会に行くときにすでに決まっていた。
「実はバルク購入にはもうひとつ利点がありました。最終製品だと包材や詰め合わせにかかる人件費などすべてが最終コストに乗った状態で輸入をするので、最終的にすべてに関税が乗ってしまうんです」
原料だけ買ってくると、関税がかかるのはその分だけ。日本で資材を調達することで、関税を抑えられるのである。
「輸送効率もいい。原料を20フィートコンテナで満載するのと、製品を満載するのとでは、乗る量が違います。この部分での輸入コストも抑えられます。だから、複数の商品をリパックして提供しても、品質を維持し、かつお求めになりやすい価格にできるんです」
実は濱田が菓子のバイヤーになったばかりの頃、チョコレートはダウントレンドだったのだという。年率5%ずつ売り上げが下がっていたほどだった。
「それまでは、他社ではあまり売れていなかったトリュフチョコレートのような商品が人気だったんです。ところが、だんだんどこでも買えるようになってしまった。そうなれば、成城石井でチョコレートを買う理由はない、ということになってしまうわけです。売り場に新しい風を吹かせられなかった。それが、売り上げにも影響していたのだと思います」
ところが、ナポリタンチョコレートがスタートし、バルクを活用することによって、ここから数字が上がっていく。
「ものすごく売れましたから。こんなの見たことがない、ということだったんだと思います」
今までと売り場ががらっと変わった。バルクで入れるという選択肢は、バイヤーとしての選択肢を広げ、取引にも幅を出せるようになった。
「今までは製品を製造しているメーカーさんだけとの交渉でしたが、今度はバルクという交渉が増えたので、輸入できるものの幅が大きく広がったんです。ここから、チョコレートのカテゴリーは大きく広がりました」
チョコレートは今、ニーズが多様化し、新しいマーケットが生まれている。機能性、健康・美容の観点からハイカカオチョコレートを好む人が増えている。
「こうしたトレンドも、海外の展示会に行くと見えてくるんです」
そして何より、展示会での本気度が違うのだ。入ってくる情報量が違うのである。