ますます多様化する現代チューハイ事情 連載:深掘りすれば見えてくるチューハイ編

室作幸江(ライター)
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【キーワード② 地域限定】社会貢献活動も担うクラフト系ご当地チューハイ

日本の地域特産果実を使った「氷結」
日本の地域特産の果実を使って、地域の魅力を届けるキリンビールの「いいね!ニッポンの果実。氷結®」プロジェクトシリーズ
宝酒造「寶クラフト」
ご当地の素材の特長を活かし、丁寧につくられた宝酒造の「寶CRAFT」

 チューハイのフレーバーとして王道の果実。その果実に着目し、地域の特産果実を使うことで、地域の魅力を発信する活動につなげている商品がある。その先駆けといえば、キリンビールが2013年に発売した「氷結®アップルヌーヴォー」と「氷結®和梨」だ。売上げ1本につき1円を東北の農業の震災復興支援に活用するという取り組みが高い評価を獲得。15年からは「いいね! ニッポンの果実。氷結®」プロジェクトをスタート。日本の地域特産の果実でつくった「氷結®」を通じて、その土地の魅力を全国に発信している。国産・地産果実ということで安心感があるだけでなく、地域支援・活性化への期待や取り組み自体に対する共感もあって、とくに女性を中心に支持を集めている。これまでは「氷結®」スタンダードシリーズを中心に展開してきたが、好評につき、19年以降は氷結®ストロングシリーズでも実施。取り組みを強化している。

 同様に、全国各地の素材の特長や個性を生かして丁寧につくり上げているのが、宝酒造の「寶CRAFT」だ。17年からスタートしたシリーズで、「栃木ゆず」や「信州シナノリップ」などラインアップは30種類を超える。素材が希少な場合が多く、一度に多くの製品をつくることができないため、いずれも地域限定発売だ。それゆえ「ここでしか飲めない味」として人気を博している。地域の特産として今後売り出したい素材をひとあし先に使うことも多く、町おこしの意味合いももつ商品でもある。

【キーワード③ 抹茶ハイ】国内外で注目の抹茶SNS映えも大きな魅力

 ここ数年、国内外を問わず抹茶が注目を浴びている。とくに国内では、インバウンド需要もあって抹茶を使った菓子類が大人気だ。そんな抹茶を割材として使ったチューハイ、いわゆる「抹茶ハイ」が外食シーンでブームの兆しだ。昨年10月にはトレンド発信地、渋谷で日本初の「抹茶ハイフェスティバル2019 IN渋谷」が開催され、抹茶ハイを提供する話題の4店がキッチンカー形式で出店。10種類以上の抹茶ハイと、抹茶ハイに合う料理を提供して賑わった。

 なぜ抹茶ハイなのか。理由として3点挙げられる。1つは抹茶自体がもつ健康感だ。抹茶にはカテキンやテアニン、ビタミンCなどの栄養素が含まれている一方、焼酎は糖類ゼロ。罪悪感なく飲用できる。2つめは甘くないことだ。食中酒として飲用しても、食事を邪魔しない。そして3つめはSNS映えすることだ。鮮やかな緑色は美しく、豆乳やミルクを入れてグラデーションを楽しむこともできる。

 そんな抹茶ハイをいち早く商品化したのが、宝酒造の「極上抹茶ハイ」シリーズだ。抹茶ハイフェスティバルに先駆けて同年9月に全国発売した。抹茶は水等に溶かすと時間が経つにつれ、風味や色味が減退する特性をもつ。そこで同社では、抹茶らしい風味と色調を保つ独自技術(特許出願中)を開発。居酒屋で味わえる抹茶ハイが家庭でも楽しめるようになった。このシリーズの今後の動向が気になるところだ。

宝酒造「極上抹茶ハイ」シリーズ
時間が経っても抹茶らしい風味と色調が楽しめる宝酒造の「極上抹茶ハイ」シリーズ

 

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