2022年秋・冬 売上伸長率ランキング 物価高による節約志向や健康に配慮したアイテムが上位

石山 真紀(フリーライター・売場研究家)
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レギュラー品からお得感のある大容量品へのスイッチも

 長引くコロナ禍や物価の上昇によって生活者の消費マインドが変化し、節約志向の観点から大容量品を選ぶ動きも目立っている。

 アサヒビールの「ブラックニッカ クリア」は、ピートを使わず熱風だけで乾燥させた大麦麦芽「ノンピートモルト」を採用し、良質のグレーンウイスキーとブレンドすることで、クセのない味わいとスッキリした飲みやすさを実現した同社を代表するブレンデッドウイスキー。同品は定番の700ml瓶以外に、180mlの小瓶から4000mlPETの大容量まで幅広いサイズ展開を行っており、1800mlは中容量帯にあたる。今回、1800m lの紙パック品が伸びた背景には、700ml瓶からのスイッチに加え、紙パックという捨てやすさも影響していると推察される。

 フタバ食品の「特デカチョコバー」は、「安い」「おいしい」「大きい」がコンセプトのアイスバー。コロナ禍の長期化に伴い、コストパフォーマンスの高さから低価格帯アイスの需要が伸びており、なかでも「特デカチョコバー」の販売出荷数は前年比6%増と好調に推移している。22年9月のリニューアルではバニラアイスの無脂乳固形分をアップし、さらに濃厚な味わいが楽しめるようになった。

 通常サイズからお得感のある大容量品へのサイズアップは、前述した「臨醐山黒酢」や「淡麗プラチナダブル」でも同様の動きが見られている。

 コロナ期間中は在宅時間の増加に伴い、外食品質や本格派、味の新奇性など、少しこだわったものを選びたいという機運が高まった。

 備後漬物の「旨さやみつきキムチ」は、ブレンドした唐辛子の辛味と魚介の旨味のバランスが取れたキムチ。安全・安心な国産白菜を使用し、先味、中味、後味にこだわった3種の唐辛子と、えび・かに・かつおによるまろやかなうま味により、ご飯がいくらでも進むやみつきの味をめざした。

 フタバ食品の「ダンディーチョコレート」は、ビターチョコアイスとブラッククッキーチョコをチョコ味のモナカではさんだチョコレート尽くしのモナカアイス。22年秋のリニューアルでは華やかな香りが特長のカカオマスを新たにブレンドしたほか、生クリームも増量し、よりコク深い味わいと香りへ進化している。

 フジパンの「ふわしろロール 北海道ミルク」は新潟県産の米粉を配合することで独特のしっとり感と柔らかさを持つ生地に仕上げた食卓ロール。また世代を問わず人気の高い「北海道産練乳入りミルククリーム」を中に注入することで、朝食だけでなく、おやつなどの間食でも利用しやすくなっている。

 アサヒビールの「クエルボ・エスペシャル・レポサド」は、世界No.1 ※3テキーラブランド「ホセ・クエルボ」を代表する商品。2カ月以上の樽熟成を経たテキーラで、ほのかに甘い樽香とまろやかでコクある味わいが特長だ。カクテルの「マルガリータ」の材料でも知られ、バーやクラブなどで人気の銘柄だが、家飲み需要の増加に伴い、20代から30代の若年層を中心に家でも「クエルボ・エスペシャル・レポサド」を楽しむユーザーが増えている。

 23年5月8日に新型コロナウイルス感染症が5類へ引き下げられたことで、外出機会の増加に伴う需要回復への期待感はあるものの、ロシアのウクライナ侵攻による政情不安、長引く原材料価格の高騰、円安などの影響から、消費者の購買意識は依然として保守的だ。先行き不透明な状況下、変わりゆく消費トレンドを敏感にキャッチし、売場づくりに生かすことが求められている。

※1:100ml当たりプリン体0.5mg未満のものをプリン体0と表示 ※2:食品表示基準による ※3:IWSR2022

出典:KSP-POS(食品SM)に基づき弊社にて集計。2022年10月から2023年3月までの金額増減率でランキングを抽出。金額構成比1%以上の商品が対象(CGC商品は除外)。対象期間の前年10月までに出現のない商品は除外。

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