2020年代はマーケティングが激変!キーワード7つの「香り2.0」に乗り遅れるな!
デジタル疲れが香りマーケティングを加速させる!
日本特有の事情も、「香り」の世界の進化を後押しするという。
日本には古くから、衣服に香を焚いたりするなど、ほのかな香りを楽しむ文化が根付いている。柔軟剤が市場性をもったのも、その影響が強い。
次に「デジタル疲れ」だ。ある調査によれば、2012年のスマホの閲覧時間は40.4分だったのに対し、2018年は3時間5分にもなっている。
さらに、外資系ホテルのロビーを中心に「香り」の導入が進んでいる。日本国内でのその先駆けは、ウェスティンホテル館内で提供される心地よく洗練された魅惑的な香り「ホワイトティー」。ブランドイメージを表現する香水として販売したり、アメニティグッズにしたり、クリスマスカードに噴霧したりするなど、香りの用途も広がっている。ここ数年、そうした動きは、ホテルだけでなく、フィットネスクラブ、ショッピングセンターにも広がりを見せている。
また1980年代のワインブームのころには、ソムリエさながらにワインのアロマをかぎ分けることが流行った。親からその影響を受けた子どもたちは、いまや成人となり、いい香り、悪い香りといった、香りの違いがわかる世代に育ったということもある。
現在、日本国内で香り市場を牽引する企業として、1948年(昭和23年)設立の大洋香料(大阪市/竹内 健社長)、香り演出による空間プロデュースを通じて、効果的なプロモーションを支援する東洋メディアリンクス(東京都/松島 透社長)、ホテルやショップ、商業施設など、全世界3000カ所以上の施設で、天然アロマの機能を生かした、感性に訴えかける空間デザインを提供しているアットアロマ(東京都/片岡郷社長)などがある。
「わが店だけの香り」で差別化してブランディングする
海外では、日本以上に「香り」の活用が進んでいる。
渡辺氏が、とくに注目する地域として自ら足を運んで確かめてきたのが、米国ニューヨークと中東のドバイだ。
ニューヨークでは、The North Faceの旗艦店、復興なった新WTC、1泊5万円からの高級ホテル「SIXTY LES」。The North Faceの旗艦店では、店のブランディングに合わせオリジナルの「ヨセミテの香り」を店内空間に導入した。オリジナルの香りということもあり、どんな香りなのかに関心が集まり、SNSによる拡散、ニュースでの報道により、この「ヨセミテの香り」=The North Faceというイメージを、うまく伝えていた。新WTCでは、最上階の展望台の入り口、ビルを再興した人たちの偉業を讃える映像が流されている地下1階の2か所で、それぞれ「香り」を導入、別々のイメージを想起させるようになっている。SIXTY LESで感じられたのは、「光×ミュージック×香り」による上質な空間の演出だったが、従業員に聞いたところ、香りを演出するアロマは「アマゾンで購入した安価なもの」ということだった。演出の組合せにより、コストをかけなくとも、一流のブランドイメージを訴求できるということだ。
中東には香りの文化がある。宗教上の理由でお酒を飲まないこの地では、香りによって、客人をもてなすこと(乳香の文化)が古くから行われてきた。
Armani Hotel Dubai(アルマーニホテルドバイ)では、マッコウクジラの腸内で生成される結石のもつ独特な甘い匂いを振りかけたアンバーグリスコーヒーがふるまわれ、体験したことのない香りにより、ワンランク上の気分に浸ることができる。広さは東京ドーム20個分、世界最大の香水売場のあるThe Dubai Mallでは、数ある入り口のうちの、たった1つ入り口のみで、香りのもてなしが行われている。