大手コンビニ3社、共同物流実験の結果と思わぬ成果とは
流通経済研究所は、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム「スマート物流サービス」の一環として、大手コンビニ3社によるチェーン横断的な共同物流の実証実験を行い、その詳細な結果について発表した。今回の結果を、過疎地における物流網の維持や、CO2削減に繋げたい考えだ。
共同配送による効果とは
流通経済研究所は、都市部に比べて店舗密度が低い北海道において「コンビニの配送センター間の物流の共同化」と、「遠隔地店舗(買い物困難地域)の配送の共同化」の2つの実証実験を主導した。重要なインフラの1つであるコンビニエンスストアにおいて、安定的に商品を供給するための物流網の維持・構築、CO2削減、買い物困難者対策などを目的とする。参画したのは、セブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンの3社だ。
まずコンビニの配送センター間の物流の共同化では、セブン-イレブン・ジャパンとファミリーマート、セブン-イレブン・ジャパンとローソンの2つの組み合わせで実証実験を実施。コンビニ各社の基幹センターがある札幌から、それぞれの函館サテライトセンターまでの横持ち配送を共同化した。その結果、通常配送時と比較して、1便あたり、走行距離275km(48%)、CO2排出量176kg(45%)、時間は2.5時間(23%)の削減効果があると判明した。
「遠隔地店舗(買い物困難地域)の配送の共同化」では、函館以南西地域で、セブン-イレブン2店舗と、ローソン5店舗の配送を共同化した。結果は以下の通り、走行時間は20%の削減、走行距離は22%の削減となった。
流通経済研究所は「新商品の発売時など物量が増加するタイミングには、チェーンごとにトラックを追加手配することがある。その場合には今回実施した実証実験のようにセンター間の横持ち物流の共同化を行うことで、上記のような削減効果が期待できるのではないか」と分析。また、トラック運転手の業務量を調整し、働く環境を改善することに繋がるのでは、と期待を寄せた。
結果を受けて実装を検討する企業も
今後は、実証実験の結果を踏まえ、SDGsの観点も重視しながら、コンビニ各社とサプライチェーンを構成するステークホルダー全体で、コンビニ業界における新しい物流の形を検討していく。ただし、大手コンビニ3社が共同配送を本格化するにあたっては、各社が発注タイムなど、データを標準化できるかが課題になる。
一方で、今回の実験結果を受け、北海道内のホテルが、チェーン間の共同配送の実現にむけて前向きに検討を始めたという。たとえばリネン類を運送する際に、ホテルが共同配送をすることで効率化に繋げるといった取り組みだ。実験を主導し、共同配送の相談も受け付けているという流通経済研究所は「共同配送は広く流通小売業で取り入れられる仕組みなので、これをきっかけに今後さらに広がっていけば」と今後の展望を語った。