商品ページは「聞く時代」に! アマゾンが進めるAI戦略の最前線
ショッピングのあらゆる側面に活用されるAI
アマゾンはすでに、AI技術をショッピング体験のさまざまな場面に組み込んでいる。代表的な取り組みとして、以下のような機能がある。
ルーファス(Rufus):生成AIによる対話型ショッピングアシスタント。商品に関する質問に会話形式で対応
ショッピングガイド:100種類以上の製品タイプを対象に、動的な推奨や比較情報を提供するリサーチ機能
レビューハイライト:多数のレビューから共通する傾向やテーマをAIが抽出し、要点を可視化
これらはすべて、顧客一人ひとりのニーズや文脈に即した高度なパーソナライゼーションを可能にするものであり、「探す」から「見つかる」への購買体験の転換を促進している。
さらに、AIスタートアップの米Anthropic(アンソロピック)への出資や、同社のAI基盤モデル「Claude(クロード)」を活用した新型音声アシスタント「Alexa+(アレクサプラス)」の開発も進行中であり、アマゾンのAI戦略は今後さらに広がりを見せることが予想される。
AIの「光と影」が小売業に突きつける問い
アマゾンが掲げる「AIによる顧客体験の再発明」は、消費者に新たな利便性をもたらす「光」の側面がある一方で、小売業全体に構造的な変化を迫る「影」の側面も併せ持つ。
とりわけ、AIによる推奨機能の高度化が進むことで、消費者の購買行動に対する影響力は今後ますます強まると見られる。その結果、「どの商品が、どのようなロジックで推奨されているのか」という点が、従来以上に問われることになるだろう。アルゴリズムの透明性や説明責任、バイアスの排除、そして消費者データの取り扱いといった倫理的課題にどう向き合うかは、AI活用を推進する企業にとって避けられない論点となる。
加えて、企業のESG(環境・社会・企業統治)への関心が高まる中で、AI活用と環境・社会との調和をいかに実現するかも問われている。アマゾンのAI戦略は、その成否にかかわらず、他の小売事業者にとって先行モデルとなるだろう。
アマゾンによるAIへの巨額投資は、他の小売業者とのあいだにさらなる「データ格差」「技術格差」を生む可能性がある。この潮流に、他の事業者はどう対抗すべきか。単なる追随ではなく、自社の顧客基盤や店舗網といった強みを生かし、独自のAI活用や人間的で温かみのある顧客体験をどう創出していくか。AIと共存する未来を見据えた、各社の戦略的な思考と実践が今、問われている。
月刊アマゾン の新着記事
-
2025/10/09
アマゾン、ロボット100万台時代の物流新戦略 AIが導く「人間と機械協働」の現在地 -
2025/09/12
最短60分でiPhoneが届く!? アマゾンのドローン戦略の新局面 -
2025/08/15
商品ページは「聞く時代」に! アマゾンが進めるAI戦略の最前線 -
2025/07/17
地方部の配送網と全米の拠点整備に190億ドル投資! アマゾンが仕掛ける物流戦略とは -
2025/06/18
米アマゾンの物流拠点で75万台が稼働! 人型ロボットは労災を食い止められるか? -
2025/05/13
アマゾンがねらう“低価格帯の覇権” 新EC「アマゾン・ホール」を世界に拡大
この連載の一覧はこちら [39記事]
アマゾンの記事ランキング
- 2025-11-06南アフリカ初の「ウォルマート」開業 英国の「アマゾンフレッシュ」閉鎖へ
- 2024-05-29利用減少から一転、会員数過去最高のアマゾン・プライム 復調の理由は?
- 2025-12-04ウォルマートが生鮮にRFID導入 アマゾンは食品の新PBを発売
- 2025-04-14ネットスーパー相関図 2025 市場拡大背景に協業・提携が活発化!
- 2025-06-09アメリカ小売業ランキングトップ10! 環境激変下での各社の業績&成長戦略とは?
- 2019-05-14世界の小売りブランド価値首位はアマゾン、2位にアリババ=調査
- 2019-10-28米アマゾン、商品の店頭受け取り拠点を拡大、新たにGNCなど3社と提携
- 2020-05-04良品計画、アマゾンで「無印良品」を販売、日用品など約250商品
- 2020-07-07数々の米アパレルを死に追いやったアマゾン・エッセンシャルズ静かに日本に上陸
- 2020-07-21インド企業の海外アマゾンサイトでの販売が20億ドル突破




前の記事


ドラッグストア決算2025 上場19社すべて増収! 統合控えるウエルシア&ツルハの業績は?



