米アマゾンの物流拠点で75万台が稼働! 人型ロボットは労災を食い止められるか?

小久保 重信(ニューズフロント記者)

従業員の役割も変化、高度な業務への転換を促進

 こうした倉庫の自動化を進める一方で、従業員の役割も変化しているようだ。英『フィナンシャル・タイムズ』紙によれば、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究機関「MIT交通輸送・ロジスティクスセンター(MIT CTL)」のエバァ・ポンセ氏は「ロボットは単純作業を代替する一方で、新たな雇用も創出する」と指摘する。

 実際、アマゾンは19年以降、約12億ドル(約1700億円)を投じ、従業員のスキルアップを支援してきた。ロボット操作やメンテナンス業務など、より高度な業務への転換を促し、従業員のキャリアアップを図ることを支援しているかたちだ。

 24年に開設したばかりの米南部ルイジアナ州にある物流拠点には、従来倉庫の10倍の規模でロボットシステムを導入している。この投資によりEC注文の処理コストが25%削減されたとアマゾンは説明している。米金融大手モルガン・スタンレーのアナリストは、こうした設備投資が30年までに年間100億ドル(約1兆4500億円)のコスト削減効果をもたらすと予測する。

 また、米アマゾンは米半導体大手のエヌビディア(NVIDIA)とも協力し、物流施設の「デジタルツイン」を構築する計画だ。これにより、現実の倉庫を再現した仮想空間でロボットの訓練やシミュレーションが効率的に行えるようになる。

 ただし、現時点ではロボットが担えるのは主に単純作業に限られており、複雑な判断や細かな作業など、人間でなければ対応できない業務が依然として残っている。今後は、従業員の身体的負担を軽減するなど、労働環境の改善を図る。ロボットと人間の協働をこれまで以上に進化・加速させ、より効率的で安全な物流システムの構築をめざす考えだ。

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