数字で紐解く!ニューノーマルにおける東南アジアの小売市場の動向 #4タイ編

2020/12/21 11:00
    ダイヤモンド・リテイルレビュー チーフ・エディター 内山 宗生
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    経済成長と世帯収支

    タイのショッパーの世帯収支は厳しい状況にある。GDPは過去5年間で22%増加したが、その5年間で世帯収入は3.4%減少、世帯支出は2%減少した。しかし、収入の減少率は支出減少率より高く、家計債務は増加している。(2018年末時点でタイの対GDP比家計債務残高は78.2%と先進国並みの高さにある)

    タイ GDP・世帯収入・世帯支出の伸長率 (2015年/2019年)
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    世帯支出の増減

    世帯支出額が減少するなかで、支出が増加したのは「通信」「住宅/光熱費/家具・家財」「非消費関連」の3つのカテゴリーである。携帯電話代の比率が高い「通信費」や「住宅」「保険」「利子の支払」の支出は増えるものの、他のカテゴリーでは「贅沢なもの」「切り詰められるもの」の支出を減らす傾向が明確になっている。

    タイ 世帯支出科目別 増加支出金額と増減率 (2015年・2019年比較)
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    タイの小売市場

    総選挙が憲法裁判所によって無効化され、インラック首相の失職、プラユット陸軍大将による戒厳令が発令された2014年の小売売上は前年比5.8%減少し、翌15年にさらに縮小した。16年にはブミポン国王が崩御 (10月)し、約1年間を服喪期間としたことなどから、小売市場は前年を維持するにとどまった。翌17年から市場拡大に転じ、17年は前年比6.3%増、18年は10.8%の2ケタ増となっている。19年は前年比3.1%増と拡大幅を縮小させた。

    タイ 小売売上指数の推移 (2009年〜2019年)
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    2020年上半期の小売市場

    COVID-19による「非常事態令」は2020年3月26日に発令され、タイの小売市場は4月には前年同月比29.4%減、翌5月に28.2%減となった。一般小売チャネル、専門店チャネルとも売上を減少させたが、一般チャネルはより早く回復の兆しをみせている。世界的な金融機関による予測では、タイの2020年通年の経済成長率をマイナス5.5%からマイナス7.7%としている(2020年6月発表数値による)。

    タイ 小売売上指数 前年同月比 (2020年上半期)
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    本連載と「ダイヤモンド・リテイルレビュー」について

    ダイヤモンド・リテイルレビューASEANはASEANの中核をなす6カ国(タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、ベトナム、フィリピン)のショッパーと小売市場の実態を読み解く有料報告書。ファクトを基盤としたASEAN各国の小売市場の全体像や主要チャネルの現状、ショッパーの支出傾向などを把握することができる
    2018年から刊行を開始しており、2020年12月にマレーシア、シンガポール、タイの3カ国の更新版「ショッパー&リテイル2020/21」を刊行。更新版は、2020年上半期の小売市場の状況を特集として扱い、3カ国の小売環境の大きな流れとCOVID禍にある市場の最新情報を提供

    • ダイヤモンド・リテイルレビューASEANの詳細については、下記URLを参照していただきたい。また、インドネシア、ベトナム、フィリピンに関しては、海外往来制限が自由になった後に発刊を行う予定。

       https://drr.diamond-rm.net/

    • DCSオンラインでは、更新された3カ国の報告書の要点を4回のシリーズにてご紹介する。また、登録をいただいた方には、オンデマンドでプレゼンテーション動画を配信しており、そちらもあわせてご利用いただきたい。

    #4 タイ編 特別動画を視聴

    シリーズの内容

    1.  マレーシア・タイ・シンガポールの2020年上半期の小売市場の概要
    2.  マレーシアのショッパーの消費と小売市場
    3.  シンガポールのショッパーの消費と小売市場
    4.  タイのショッパーの消費と小売市場
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