コロナ下で三者三様の様相を呈した2020年のシンガポール・タイ・マレーシアの小売市場

2021/05/13 13:15
ダイヤモンド・リテイルレビュー チーフ・エディター 内山 宗生
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ダイヤモンド・リテイルメディアは、東南アジアの小売市場の現状分析と戦略立案をサポートする「ダイヤモンド・リテイルレビュー」(PDFファイル形式)を刊行しています。各国の消費者情報を深掘りするとともに、小売マーケットの最新情報をお伝えする「ショッパー&リテイル」として刷新し、2021年4月にシンガポール、タイ、マレーシア、最新版を発刊いたしました。今回は最新版の内容を一部ご紹介いたします。

コロナ下で三者三様の様相を呈した2020年のシンガポール・タイ・マレーシアの小売市場

シンガポール
COVID-19感染とシンガポール経済

  シンガポール政府は2020年4月7日に必須サービスや製造活動を除く大半の職場を閉鎖する部分的ロックダウン「サーキットブレーカー」を発令した。「サーキットブレーカー」は6月1日まで延長され、それまで営業継続が認められていた職種を削減し、街を移動する労働者の割合を15%までとした。また、ドミトリー在住の全ての外国人労働者の外出を禁止した。
 7日間平均の新規感染者数が500人を下回り始めた6月2日、部分的にロックダウンの解除を開始した。最初の「緩和フェーズ1」では労働力の3分の1が復帰し、食品以外の小売店の開業や飲食店の店内でのサービスは、6月19日に始まった「緩和フェーズ2」から可能になった。
 2020年12月28日に経済活動再開を最終段階に移行すべく、「緩和フェーズ3」が発令された。2020年末時点で7日間平均の新規感染者数は30人前後まで減少しており、2021年3月に入ってからは10人台とさらに低い水準を維持している。
 シンガポールのGDP成長率は2019年に大きく低下し、2008年の世界経済危機以来の低い成長率に落ち込んでいた。その状況下でコロナ禍にみまわれた2020年のGDPは、通年でマイナス6.2%となったとアジア開発銀行は発表している。ちなみに、2021年のGDP成長率はプラス4.5%とアジア開発銀行は予測している。

2020年のシンガポール小売売上

 「サーキットブレーカー」が開始された4月にシンガポールの小売売上は、前年同月比マイナス32.2%となり、5月にはさらにマイナス44.7%と大きく低下した。「サーキットブレーカー」が終了し、「緩和フェーズ1」「緩和フェーズ2」が始まった6月に小売売上はマイナス23.9%、そして翌7月にはマイナス7.9%と回復基調になった。2020年12月はマイナス4.5%である。

シンガポール 小売売上指数 前年同月比(2020年)
 小売売上の大幅な減少は小売市場の59%を占める「専門店チャネル」と、長年シンガポールの小売市場の成長を牽引してきたものの近年は成長が鈍化していた「百貨店」で生じた。一方、「スーパーマーケット」は未曾有の売上増加となった。大きく売上を減少させた「専門店チャネル」の中では、「アパレル」「化粧品/トイレタリー/医薬品」「食料品アルコール」「時計/宝飾」「眼鏡・本」は「緩和フェーズ1・2」が開始された後も、売上の減少傾向が続いている。
 シンガポールのEコマース化率(小売市場に占めるEコマースの比率)は、2020年1月にすでに6.5%と高いレベルに達していた。Eコマース化率は「サーキットブレーカー」が開始された4月に20.1%、翌5月には26.3%へ上昇した。6月以降にEコマース化率は急速に下降しているが、12月には12.6%と1月から6.1ポイントの上昇となっている。
 「専門店チャネル」の中では、「コンピューター/通信機器」と「家具/家財」は5月に大きくEコマース化率を、それぞれ94.3%、93.6%とした。未曾有の売上の増加をみた「スーパーマーケット」だが、Eコマース化率はさほど増加しておらず、6月以降は10%~12%台で推移している。

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