上場食品スーパーの2024年度決算 物価高がもたらした「増収減益」の実態とは
生き残りを懸けた「インフラ投資」とオペレーション変革
こうした事業環境の悪化に直面し、食品スーパーが持続的に生き残るためにはなにが求められるのか。
原価・光熱費・人件費の高騰は、どの企業にも等しくふりかかる外部環境であり、もはや前提条件である。そのなかで唯一、各社が自力で変えることができるのは、「店舗オペレーション改革による生産性の向上」だ。その代表例として、これまで各店舗のバックヤードで行われてきた生鮮・総菜の小分けやパック詰め、製造作業をセンター加工へと移行させる動きが挙げられるだろう。
日本の食品スーパーでは、店内加工(インストアオペレーション)が当たり前だったが、その分、労働分配率が他業態よりも高止まりしてきた。しかし、センターでの一括加工・パッキングと店舗配送を進めれば、生産性向上の余地はまだ大きい。

実際に、大手食品スーパーはここ数年、センターやインフラ投資を拡大しており、サミット(東京都)は25年度に新プロセスセンターに132億円、ヨークベニマル(福島県)も郡山第4ファクトリーに100億円を投じた。こうしたインフラ投資の総額は、数年で数倍に拡大している(図表⑥)。先述したベルクやハローズも、積極的に同様の設備投資を進めている点は注目に値する。
業界再編の加速と「持続可能性」の条件
このような設備投資やセンター化への流れは、スーパー業界の構造自体を大きく変えつつある。従来は、店舗ごとに加工業務を分散していたため、中小スーパーも大手と十分に競争できていた。しかし、集約型インフラが普及すると、資本力や規模の差がそのまま競争力の差となる。今後5~10年で、スーパー業界の寡占化が一気に進むのはほぼ間違いない。
とはいえ、スーパーの価値を最終的に決めるのは消費者であり、資金力だけが勝敗を左右するわけではない。ただし、どれほど優れた店舗を持っていても、インフラが整っていなければ、同じ水準の店舗を増やすのは難しい。チェーンストアとして成長し続けるためには、インフラの整備が欠かせないのだ。
たとえば、中部地方の大手バローホールディングス(岐阜県)は、チェーン全体の基盤となるインフラを構築しつつ、生鮮品の付加価値を高める「デスティネーションストア」型の店舗で集客力を強化している。今後は、このように生鮮部門の強化とチェーンインフラの整備の両立が不可欠となる。
人手に頼って売上を伸ばすやり方は、デフレからインフレに時代が変わった今、見直さざるを得ない。非正規スタッフの低賃金に頼る“人海戦術”の時代はすでに終わったのだ。
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