上場食品スーパーの2024年度決算 物価高がもたらした「増収減益」の実態とは

中井 彰人 (株式会社nakaja labnakaja lab代表取締役/流通アナリスト)

業界データが示す「規模の二極化」と地域ごとの明暗

 次に、業界団体のデータを見てみよう(図表④-1)。消費者の節約志向が強まるなか、売上を伸ばしているのは主に規模の大きなスーパーであり、中小規模のスーパーでは売上の減少傾向が続いている。

図表④-1食品スーパー 規模別既存店売上動向
全国スーパーマーケット協会「スーパーマーケット販売統計」より

 もともと、地場スーパーは地域ごとに独力での経営を続けてきたが、業界平均の営業利益率は1%前後と極めて薄く、赤字企業の増加も懸念材料となっている。大手は「増収だが収益率低下」というトレンドだったが、規模の小さい食品スーパーは減収減益に追い込まれたのではないだろうか。

 加えて、地域ごとの売上動向にも特徴がみられる。(図表④-2)関東、中四国、近畿では売上が比較的堅調だが、北海道、東北、九州、中部では伸び悩みが続く。とくに中部圏では、大都市圏を擁していながら数字が芳しくない。

図表④-2食品スーパー 地域別既存店売上動向
全国スーパーマーケット協会「スーパーマーケット販売統計」

 この理由の1つとして挙げられるのが、いわゆる「フード&ドラッグ」業態の急増だ。コスモス薬品(福岡県)、クスリのアオキホールディングス(石川県)、Genky DrugStores(福井県)といったフード&ドラッグ業態を持つ企業が毎年のように400億円以上売上を伸ばし、食品スーパーの顧客を着実に奪っている(図表⑤)。食品スーパーの市場シェアがじわじわと浸食される状況は、今後も続きそうだ。

図表⑤フード&ドラッグ 月次売上増減率
各社IR資料より

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記事執筆者

中井 彰人 / 株式会社nakaja lab nakaja lab代表取締役/流通アナリスト

みずほ銀行産業調査部シニアアナリスト(12年間)を経て、2016年より流通アナリストとして独立。

2018年3月、株式会社nakaja labを設立、代表取締役に就任、コンサル、執筆、講演等で活動中。

2020年9月Yahoo!ニュース公式コメンテーター就任(2022年よりオーサー兼任)。

主な著書「小売ビジネス」(クロスメディア・パブリッシング社)「図解即戦力 小売業界」(技術評論社)。現在、DCSオンライン他、月刊連載6本、及び、マスコミへの知見提供を実施中。東洋経済オンラインアワード2023(ニューウエイヴ賞)受賞。起業支援、地方創生支援もライフワークとしている。

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