楽天グループ(東京都/三木谷浩史会長兼社長)は2024年12月期の中間決算を発表した。売上高は対前年同期比8.0%増の1兆509億円。純損失は759億円で中間期としては5期連続の赤字となったが、「楽天モバイル」を展開する「モバイル」事業で業績が回復傾向にあることなどから、赤字幅は前年同期の1399億円から大幅に減少した。
国内EC、金融サービス好調
セグメント別にみると、主力の「楽天市場」を展開する「インターネットサービス」、銀行、証券、ペイメントなどからなる「フィンテック」が増収増益を果たし、「モバイル」は増収だったものの赤字だった。第二四半期累計の売上収益は、インターネットサービスが5895億円(対前年同期比4.2%増)、フィンテックが3961億円(同13.5%)、モバイルが1948億円(同10.4%)。セグメント利益はインターネットサービスが32億円(同23.3%増)、フィンテック81億円(同36.7%増)。モバイルは132億円の損失だったが、前年同期の185億円から43億円減少した。
好調のインターネットサービスは、楽天市場や旅行予約サービス「楽天トラベル」などを含む国内ECの流通総額が回復していることが増収増益に寄与した。なかでも海外事業において、無料通話アプリ「Rakuten Viver」や電子書籍「Rakuten Kobo」などコンテンツサービスの利用者が堅調に推移した。
また、西友(東京都/大久保恒夫社長)と共同運営していた「楽天西友ネットスーパー」の完全子会社化により、ネットスーパーの収益性も改善されているという。楽天西友ネットスーパーは8月8日に、運営会社の商号を「楽天マート」に変更。9月25日から「楽天マート」として、倉庫型ネットスーパー事業を始めることが発表されている。
フィンテックも「楽天カード」や「楽天銀行」「楽天証券」など展開する各種サービスにおいて「すべての事業でとても好調」(三木谷会長兼社長)。楽天カードは会員基盤、客単価の拡大でショッピングの取扱高が対前年同期比13.9%増の5兆9000億円となりセグメントの増収に寄与した。「楽天証券」の口座数は6月末時点で同22.7%増の1133万口座まで増えたほか、顧客基盤の拡大による各種取引が好調で過去最高収益になったという。また、キャッシュレス決済サービス「楽天ペイ」など各種サービスも増収増益を果たしている。
楽天モバイル、順調にユーザー獲得
苦戦が続いていたモバイル事業も復調しつつある。ネットワーク品質の改善などに努めながら顧客獲得対策を強化した結果、楽天モバイルの契約回線数は、23年12月期末の590万回線から770万回線に増加した(8月7日時点)。三木谷会長兼社長は理由について、通信品質の向上やユーザーがわかりやすい簡易な料金プランと言及。家族割などの料金プランで若年層のユーザー獲得が順調だという。
さらに6月には狭い路地や屋内でも電波が届くようになる「プラチナバンド」もサービス提供を開始した。三木谷会長兼社長は「圧倒的な品質向上を実現すべく地道な努力をしていきたい」と語った。モバイル事業単体において早期の黒字化をめざす。
設備投資などが原因で赤字は続いているが、三木谷会長兼社長は記者会見で「楽天モバイルのプロジェクトは、楽天グループ全体ですでにキャッシュフロー上ポジティブになってきている」と強調。8月8日には楽天モバイルが保有する通信設備等の一部を活用し、「セール・アンド・リースバック」の形態で投資家コンソーシアムから1500億円~3000億円を調達したことを発表しており、この資金調達により「グループレベルでキャッシュフローがすでにプラスになってきた。財務状況は飛躍的に改善している」と語った。
楽天グループは24年12月期の通期連結業績予想を開示していないものの、証券サービスをのぞいた連結売上高について、前期から二ケタ成長をめざすとしている。そのため、主力サービスの「楽天市場」など国内ECを含むインターネットサービスでさらなる新規顧客の獲得、「楽天トラベル」においてインバウンド需要を取り込むほか、好調のフィンテック事業においても「楽天カード」のショッピング取扱高のさらなる拡大へ対応するとの方針を示した。