脅威の損益分岐点売上高!フード&ドラッグが塗り替える、東海スーパーマーケット勢力図
最近、ある仕事の関係で名古屋を訪れることが多くなっているのだが、この街にあるタチヤ(愛知県)というスーパーマーケットが面白い。名古屋市街のど真ん中にある「錦二丁目店」は生鮮3品のみという特殊な店だが、これがなかなかにすばらしい。青果はあえてオープン加工場を売場内につくり、来店客に見えるように野菜を整え、鮮魚には基本丸魚が並び、その場で加工するスタイルで、それも見るからにコスパがいい新鮮な商品が並んでいる。なにか買いたくなってしまう実に魅力的な店であり、当然ながら結構レジも混んでいる。
生鮮のプロフェッショナル、タチヤ
タチヤは各店舗の売場責任者が直接、市場から仕入れる「仕入担当者責任制」という仕組みで、生鮮品を安く販売し、当日に売り切るというルールであるという。要は八百屋、魚屋、肉屋が店の中に並んだ、かつて市場で見たような雰囲気が再現されていて、生鮮の“プロ感”が満載なのだ。
そのため、日々、売場はダイナミックに変化し、店としての「鮮度」も高い。オフィス街と飲食店などが混在するような街に立地することもあってか、「錦二丁目店」では業務用需要も取り込まれていた。大都市の真ん中に、生鮮3品のみ、業務用歓迎というこの店はある意味、大都市部におけるスーパーマーケットのあり方に対するひとつの解を見せられたような気がした。
見た目はチェーンストアとは縁遠いように思われるタチヤだが、これが食品スーパーの東海地方におけるリージョナルトップ企業であるバローホールディングス(岐阜県)の一員だというのは業界筋では有名だが、多分、地域の消費者はあまり知らないかもしれない。
バローホールディングスと言えば、東海地方を中心にスーパーマーケット、ドラッグストア、ホームセンターなどを展開し、売上約7600億円に達する有力流通グループである(下図表)。バローホールディングスは国内有数のチェーンストア理論の具現者でもあり、充実したセンター機能をベースにした物流網の効率化により、岐阜県多治見市という盆地から発祥し、東海地域のトップクラスに上り詰めた流通グループとして知られている。
このグループにチェーンストアとはいわば対極にあるように見えるタチヤが所属していることは、ちょっと驚きなのである。しかし、これこそがバローグループの懐の深さであり、リージョナルトップとなった強さの一因とも言えよう。岐阜の盆地から飛び出し、名古屋の中心地を包囲してそのシェアを拡大しているバローにとってタチヤは、さらなる名古屋深耕の重要なパートナーであり、さらに言えば、今後進めていく京阪神人口密集地攻略の際にも、尖兵となるのであろう。
流通アナリスト・中井彰人の小売ニュース深読み の新着記事
-
2024/09/27
丸亀製麺がはなまるうどんに大きく差をつけた「逆張り戦略」とは -
2024/07/04
コロナが明けても安心できない外食大手の経営環境と深刻な課題 -
2024/05/02
イズミが西友の九州事業を買収、激動の九州小売マーケットを制するのは? -
2024/04/03
セブン-イレブンの7NOW全国展開へ!拡大するクイックコマースへの“懸念”とは -
2024/01/17
主要駅から消える百貨店……ターミナルの新たな覇者となるのは? -
2023/12/25
徹底考察! ドン・キホーテ新業態「ドミセ」出店の真のねらい