「深めてとがる」 ハードオフ山本太郎社長が語る、チェーン店でファンを増やす方法

聞き手:高浦佑介 (ダイヤモンド・ホームセンター編集長)
構成:小笠原 玲 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

ファンを増やす「深めてとがる」

―店舗運営でとくに意識していることは何ですか。

山本 チェーン店として、いつどの店舗に行ったとしても「ハードオフらしさ」がなければならないと考えているため、清掃とあいさつを徹底している。しかし、それ以外の店舗運営は自由度が高く、各店舗の個性を大事にしている。店づくりに関しては厳格なマニュアルがないため、店長やスタッフの趣味が反映され、各店舗独自の色に染まっている。

 25年3月期のテーマは「深めてとがる」だ。商品に対する専門性を深め、とがった個性につなげることを意識している。たとえば、着付けの先生をしていたアルバイトスタッフが入ってきた際に、そのスタッフに着物コーナーをつくってもらったら売上が上がった。そういった各店舗独自のとがり、ユニークさをもっと出していきたい。

ハードオフの店内

ハードオフの店内
店づくりに関しての厳格なマニュアルはないため、店長やスタッフの趣味が反映され、各店舗独自の色に染まっている。25年3月期のテーマは「深めてとがる」だ

―「とがり」を大事にするために意識していることはありますか。

山本 当社は自店で買い取った物を販売する地産地消モデルで運営しているため、「新品仕入れ」という言葉はタブーだ。スタッフにも禁じ手だと指導をしている。どれも一点物だからこそわくわくするのに、新品仕入れをしてしまうとすべて同じ在庫になって面白くなくなってしまう。純粋に一般のお客さまからの買い取りで在庫を回すというこだわりが、僕らの強みでもある。

―フランチャイズ(FC)運営企業が37社と多いですが、FC店舗にも「とがり」は浸透していますか。

山本 FC企業にも37社37通りの個性があり、それが僕らのグループの面白さになっている。全店直営では今のハードオフにはなっていなかったはずだ。ハードオフの独特さやわくわく感の原点はFC展開にあるかもしれない。

―各店舗の「とがり」に対してお客さまの反応はいかがでしょうか。

山本 お客さまは各店舗の個性を見に来ていると感じる。なかには「趣味はハードオフです」という方や、1日に10店舗を巡るほどのファンもいる。普通は10店舗もチェーン店を巡らない。1店舗ごとに違った個性があるからこそ巡っていただけるのだと思う。

 当社はファンに支えられているし、ファンをつくっていくことが数字に直結しているという実感もある。今はSNSを活用したファンマーケティングにも取り組んでいる。ハードオフにのめり込んでもらえるファンをもっと増やしていきたい。

 

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聞き手

高浦佑介 / ダイヤモンド・ホームセンター編集長

2010年東京大学文学部卒業、12年同大学院修士課程(社会心理学)修了。14年ダイヤモンド・リテイルメディア入社。『ダイヤモンド・チェーンストア』誌の編集・記者を経て、19年4月よりダイヤモンド・ホームセンター誌編集長。ホームセンター業界のトレンドに精通しており、TV・ラジオなど数々のメディアに出演するほか、ダイヤモンド・リテイルメディアYoutubeでも業界解説動画を配信している。

構成

小笠原 玲 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

早稲田大学文学部(ドイツ哲学専攻)を卒業後、教育系の編集プロダクションで国語の入試問題の制作を担当。2024年、ダイヤモンド・リテイルメディアに入社。

休日の大半を台所で過ごすほど、無類の料理好き。得意な料理は、出汁巻き卵と切り干し大根の煮物。料理研究家の土井善晴氏を尊敬している。

趣味は、ミニシアターで映画をみること。音の大きな映画が苦手で、日常を切り取ったような変哲のない映画やドキュメンタリー映画を好む。見た作品のリーフレットを持ち帰り、コレクションしている。

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