こんにゃくとキクラゲから…代替卵ベンチャーが描く未来 UMAMI UNITED JAPAN
代替卵に残る課題とさらなる技術革新に向けた動き
卵には、スクランブルエッグや卵サラダといった「目に見える」活用法だけでなく、パンや菓子、麺類などの素材として使われる「目に見えない」活用法がある。日常的に摂取する食品に含まれる素材である一方で、さまざまな理由で卵を摂取できない人は多い。需要はあるにもかかわらず、開発の難易度の高さゆえに、代替卵を提案できるプレイヤーは世界でも稀だ。
「卵は、牛乳や肉に比べて代替品が少なく、市場における課題と可能性を感じた。そこで、誰もが安心して食べられる卵の代替品を開発し、食の選択肢を広げたいと考えた」と、山﨑氏は語る。
現在は、工業的に卵を使用するBtoB向けに、「目に見えない」用途に軸足をおいた提案活動に力を入れている。並行して、BtoC向けにも自社ECサイトで商品を展開しており、卵アレルギーの子どもの食に悩む親、ヴィーガンを志向する消費者などから顕著なニーズがあるという。
同社の製品はこれまで、大手コンビニエンスストアのヴィーガンスイーツや卵加工品、インバウンド客をターゲットとするホテルのレストランなどに採用されてきた。23年10月には、ケンコーマヨネーズ(東京都)のプラントベースの商品群『HAPPY!! with VEGE®︎』のひとつ「まるでたまご®︎のサラダ」を共同開発した。また、米国の大学や企業の食堂を運営する企業からの引き合いに応えるべく、海外展開も加速させている。
一方で、卵のすべての機能をそのまま代替できる代替卵を開発することが、業界全体の課題なのだという。「卵は、栄養価も高く、加熱方法や用途によって異なる機能を発揮する優秀な食材だ。色味や味わいも含め、卵のすべての機能を完全に代替できる製品を開発するには、さらなる技術革新が求められる」(山﨑氏)
当然ながら、「UMAMI UNITED JAPANでも、磨きをかけたワンランク上の代替卵を早急に作るべく、研究開発に取り組んでいる」と、山﨑氏。23年8月には、Beyond Next Ventures(東京都中央区)とジェネシア・ベンチャーズ(東京都港区)を引受先とした総額2億4000万円の資金調達を実施し、研究開発と事業開発の体制を強化している。
山﨑氏は、「私たちの目標は、代替卵を当たり前の選択肢にすること。プラントベースという枠を超えて、一般的かつ日常的に使われる食材のひとつにしたい。将来的には、『UMAMI EGG』が食の新たなインフラとなるような世界をめざす」と、今後の展望を語った。