「ワンカップ®大関」発売60周年!大関、長部訓子社長が語る 、今期のマーケティング戦略

聞き手:阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
構成:石山 真紀
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人と人をつなぐ「ワンカップ®大関」

──大関の商品群の中で好調なブランドは何でしょう。

長部 基幹ブランド「のものも」が、家飲み需要の増加に伴いとくに好調です。2021年秋のリニューアルでは、食事に合わせやすい味わいに仕上げ、パッケージも「国産米100%使用」や「大関」のロゴを大きく配置しメーカーのブランド感を訴求するデザインに一新しました。このリニューアルで「『のものも』があらためて大関の商品である」という認知が広がり、手に取ってくださる方が増えたとみています。

──大関は環境に配慮した日本酒づくりにも注力しています。

長部 はい。当社はSDGsの観点から、兵庫県産のGLOBAL G.A.P.認証取得の山田錦を使用した「Number:純米大吟醸原酒」や西宮市で発見された新種の「今津紅寒桜」から採取した桜花酵母を使用した「桜路 純米大吟醸」、JA全農「ニッポンエール」への参画など、地域活性化や社会福祉への貢献に力を入れています。

 また流通向けの商材として国産有機米100%、業界初となる有機JAS認証取得のオーガニック日本酒「#J」があります。同品の原料となる有機米は化学肥料を一切使用せず、環境への負荷をできる限り軽減した栽培方法で生産し、製造工程においても厳格な審査基準をクリアしています。これまでは720㎖瓶詰のみでの展開でしたが、今春、飲み切りサイズのアルミ缶100㎖をラインアップに加え、オーガニック日本酒市場の裾野を広げていきたいです。

──2024年は「ワンカップ」が発売60周年を迎えました。

長部 ありがとうございます。「ワンカップ」は当社のアイコンともいえる存在であり、60周年は「通過点」と考えています。

 これまで「ワンカップ」はG1を制した名馬をラベルにした「G-One Cup」をはじめ、人気アニメや大相撲とのコラボレーション、LGBTQのシンボル6色レインボーをあしらった「ワンカップレインボー」などさまざまな企画を展開してきました。また当社のオンラインショップではオリジナルラベルのワンカップがつくれる「THE ONLY ONE CUP」のサービスも提供し、好評を得ています。

 「ワンカップ」は日本酒の常識を変えたイノベーティブな商品であり、今後も遊び心のある企画を通じ、ブランドの魅力を伝えていきます。

──60周年に合わせ、どんなプロモーションを行いますか?

長部 まず定番の「上撰ワンカップ180㎖」は周年ロゴと「ご愛顧感謝」のメッセージを入れた商品を9月末より出荷、姉妹品である「上撰ワンカップコンパクト」も新容器・新デザインにリニューアルします。さらに東海道新幹線60周年とワンカップ60周年によるタイアップ企画として、車両貸し切りイベントを予定しており、話題になるよう図るほか「ワンカップ」60周年バージョンのラジオCMを制作し放送しています。さらにLOFT渋谷店・銀座店で開催される「ロフコト雑貨店」内の「カップ酒」特集に参画し、「ワンカップ」をはじめとし、コラボ商品などを展開、若年層への認知を図ります。

──今後、「ワンカップ」をどのようなブランドにしていきたいですか?

長部 今年入った新入社員が面接で、「『ワンカップ』を生んだ大関は素晴らしい」と言ってくれたんです。その理由を聞くと、「瓶に入った日本酒は量が多すぎるけれど、『ワンカップ』ならば飲み切りサイズで友人との会話も弾むから」と。若い方でもこうした感覚を持ってくれていることがとても嬉しかったですね。

 先ほど「60周年は通過点」といいましたが、人と人をつなぐコミュニケーションツールという「ワンカップ」ならではのポテンシャルを問い続けながら、ゆくゆくは100周年をめざし成長していきたいですね。

魁(さきがけ)の精神を持ち常にチャレンジし続ける

──24年は「ワンカップ」以外にも、「多聞」100周年、「大関 甘酒」50周年とロングセラーブランドの周年が続きます。

長部 そうですね。04年から大関が商標を引き継いだ清酒「多聞」は24年に発売100周年を迎えました。とくに北海道で圧倒的なシェアを持つブランドです。

 100周年を迎えるにあたって民謡歌手のKAZUMIさん、ナレーションに人気アナウンサーの明石英一郎さんを起用し、過去のCMを再現した「酒は多聞」新CMソングを北海道地区限定で放映しています。また、明石さんがパーソナリティを務める人気ラジオ番組でのCM提供や店頭での販促も強化し、「多聞」の魅力を訴求していきます。

 「大関 甘酒」は軽量かつリサイクルしやすい新容器の「大関 甘酒カートカン」を発売しました。容器の素材には間伐材を使用した紙を使用しており、収益の一部は緑の募金として森林整備に活用されます。

──家庭用の日本酒市場を盛り上げるため、小売業とどう取り組んでいきますか?

長部 人口が減少するなか、流通業界も競争が激化しており、日本酒売場についても価格訴求だけではなく、他社にはないオリジナリティのある商品を求める声が増えたように感じます。当社も全国に向けて一斉発売する商品だけではなく、流通業と協力し小ロットでもこだわりの商品を開発する環境づくりも準備しています。

──最後にトップとしてのミッションを。

長部 国内の需要が頭打ちのなか、日本酒業界も大関としても過渡期に来てると感じています。しかしコロナが明けたことでインバウンドも回復し、海外の方が日本の食と日本酒に触れていただく機会が増えました。ここが突破口となり、ワインのように日本酒が世界の食卓に広がっていけば嬉しいですね。明日には歴史となる今日、何ができるかを常に考えながら、魁の精神で新しいことにチャレンジし続けていきたいと考えています。

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聞き手

阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

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