行政主導で進む食品スーパーのフィジカルインターネット構想とは
「物流の2024年問題」をはじめ食品小売業界において物流改革は喫緊の課題となっている。そうしたなか経済産業省と国土交通省の主導により21年10月から、「フィジカルインターネット実現会議」が始動している。“究極の物流効率化”とも言われる「フィジカルインターネット」とは何か。そして食品スーパー(SM)業界の現在の取り組みや今後の改革の方向性はいかなるものか。同会議の分科会である「スーパーマーケット等ワーキンググループ」で座長を務める専門家が解説する。
荷物のユニットを共通化、複数社での混載を可能に
社会的に注目を集める「物流の2024年問題」やEC需要の増加などを背景に、ドライバーをはじめとする物流リソースはすでに不足の状態にある。2030年までには現在の3割程度のモノが運べなくなると予測されており、流通小売業界でも物流改革が喫緊の課題となっている。そうしたなか経済産業省と国土交通省が主導し、物流のあるべき将来像として実現をめざしているのがフィジカルインターネット構想だ。
フィジカルインターネットとは、これまで閉ざされていた各企業の物流を、デジタル技術を使ってオープン化、可視化することで、国内全体の物流資源の稼働率を向上させる物流システムのコンセプトのことである。
![物流倉庫に停まっているトラック](https://diamond-rm.net/wp-content/uploads/2023/11/iStock-941400380.jpg)
現在、各社でバラバラの荷物のユニット単位を、標準コンテナによって共通化し、さらにRFIDとQRコードを付けることで荷物の動きをデータで把握・管理する。そうすることで、複数社共同での荷物の積載や積み替え、保管ができるようにして、配送トラックなどが持つ輸送スペースや、倉庫が持つ保管・仕分け能力のシェアリングを可能にする。インターネットでのパケット交換の考え方を物流プロセスに適応させていることが「フィジカルインターネット」の名前の由来になっている。
欧州ではこの物流コンセプトのもと、消費財等のグローバル企業を中心に、すでにさまざまな研究が進んでいる。
こうしたなか日本においても22年3月、経済産業省と国土交通省が、行政主導では世界初となる「フィジカルインターネット・ロードマップ」を策定した。2040年にフィジカルインターネットの実現をめざし、30年までのアクションプランを策定している。
この構想を実現可能にするためには、業界特有の状況も踏まえ、業界ごとの具体的なプランも策定する必要があった。そこで立ち上がったのが、とくに課題の多い領域として「スーパーマーケット等」「百貨店」「建材・住宅設備」「化学品」の4つのワーキンググループ(WG)だ。このうちSM業界は、生活インフラであり、物流が滞れば生活者への影響が大きく、早期に手を打つべきと考えられている。
「スーパーマーケット等WG」は、ライオン、キユーピーなどの消費財、食品メーカーや、国分グループ、三菱食品などの卸企業、共同仕入れグループのシジシージャパン、食品小売企業では、イオンリテール、イトーヨーカ堂、イズミ、ヤオコーなど計20ほどの企業・組織のメンバーで構成。議論を重ねて消費財(ここでは加工食品・日用雑貨を指す)のサプライチェーンにおける2030年までのアクションプランをまとめ、22年3月に発表。現在は、消費財サプライチェーンの課題解決をめざす前身的な組織として2010年に、製・配・販の主要企業で発足した製配販連携協議会によって、同プランで挙がった重点取り組みの議論、検証が行われている。
4つの重点取り組み、まずは地域から改革を
では、消費財のサプライチェーンではどのような改革を構想し、実行しようとしているのか。
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