M&A、後継者、海外進出……気鋭の小売コンサルは未来をどう予想する?

構成:松岡 由希子 (フリーランスライター)

2025年は国内食品小売の勢力図を塗り替えるような大型再編が相次いだ。インフレが続いて各種コストが上昇し、人手不足や後継者不在といった問題も顕在化する中で、今後も再編が続く可能性は高い。

食品小売の勢力図は今後どう変わっていくのか。大手小売業の経営コンサルティングを手がけ、М&Aアドバイザリーとして実績多数のフロンティア・マネジメント プリンシパル・マネジメント部門 マネージング・ディレクターの彦工伸治氏に解説してもらった。

再編加速を促した「2つの要因」

 2025年に入ってから、国内の小売業界では再編の動きが顕著に加速している。トライアルホールディングス(福岡県:以下、トライアルHD)による西友(東京都)の買収や、米投資ファンドのベインキャピタル傘下に入ったヨーク・ホールディングス(東京都:以下、ヨークHD)など、大型のM&A(合併・買収)案件が相次いだ。このほか、地方も含めて再編が活発化している。

 その背景には、2つの要因がある。1つは外部環境の激変に伴うコスト構造の変化、もう1つは創業オーナーの高齢化による事業継承問題だ。

 最低賃金の引き上げが続く中で、従来のサービスを維持するためには人時生産性の向上が重要になる。その抜本的な手段として不可欠なのがシステム投資だ。ただ、それには多額の費用がかかり、一定の企業規模が必要になる。そこで自社のリソースだけで経営を続けるのは困難だと判断して有力チェーンの傘下に入るなど、合理的な意思決定をする経営者も出てくるかもしれない。

左からイトーヨーカ堂の山本哲也社長、ヨークHDの石橋誠一郎社長、ベインキャピタル・ジャパンの西直史氏
左からイトーヨーカ堂の山本哲也社長、ヨークHDの石橋誠一郎社長、ベインキャピタル・ジャパンの西直史氏=2025年9月

 また、近年の小売業界は世代交代が進み、創業オーナーから経営を引き継いだ若い経営者が台頭しつつある。事業継承のプロセスにおいて、若い経営者は創業オーナーのような価値観や思い入れにとらわれることなく、合理的な判断を下す可能性がある。その動きによっては、想定外のМ&Aが起きて勢力図が変わっていくこともある。

 今後も大型再編が続くかは、インパクトが大きなМ&Aが起きるかどうかによるだろう。たとえば、

この記事をさらに読むと、今後も続く可能性が高い食品小売業界の大型再編の裏側にある経営課題と、各社が生き残りをかけて取り組む具体的な事業エリア拡大戦略について理解することができます。

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構成

松岡 由希子 / フリーランスライター

米国MBA 取得後、スタートアップの支援や経営戦略の立案などの実務経験を経て、2008年、ジャーナリストに転身。食を取り巻く技術革新や次世代ビジネスの動向をグローバルな視点で追う。

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