第121回 「人手不足」は問題なのか? SCが考えなければならない対策とは

西山 貴仁 (株式会社SC&パートナーズ代表取締役)

“人が足りなくても回る構造”への改革を

 もちろん、接客力の向上やサービスの質の維持も重要な論点だ。しかし、これからのショッピングセンターが考えるべきは、「接客を不要にするにはどうすべきか」「人によるサービス以外で、いかに顧客満足を高めるか」という視点である。

 営業時間や休業日の見直し、スタッフに対するヒアリングや研修、ロールプレイング、覆面調査などの取り組みも、形式的に実施されるだけでなく、その必要性や負担感に再検討の余地がある。業務がスタッフの時間を過剰に奪っていないか。働く人にとって無理のない環境が整っているか。ショッピングセンターとしてできることを、現場の視点から見直すことが求められている。

 人手不足は避けがたい現実であり、今後さらに深刻化していくと考えられる。したがって、ショッピングセンターが取り組むべき本質的な課題は、「人手が足りなくても運営できる体質」への移行である。

 かつての環境に戻ることはできず、従来のやり方をそのまま踏襲することもできない。今ある制度や仕組みの見直しは不可避であり、かつての常識にとらわれず、変化に即した柔軟な構造改革こそが必要だ。

 川の流れを逆流させることはできない。いま必要なのは、流れに抗うことではなく、新たな流れの中で機能する姿を設計することである。

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記事執筆者

西山 貴仁 / 株式会社SC&パートナーズ 代表取締役

東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員。201511月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒

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