大パラダイム変化のアパレル、今までとは次元の違う発想が必用な理由

河合 拓 (FPT Consulting Japan Managing Director)

さらに追い打ちを掛けるトランプ関税

 しかし、世界でみればアパレル市場はアジアを中心に成長している成長産業だ。たとえば、私が転職したベトナム会社のベトナムという国の状況を話せば、米国向け輸出の関税率は20%であり、アジアのIT先進国といわれ、人口も日本と変わらず1億人を超え、平均中央値年齢はなんと30歳台だ。中国からベトナム経由でアメリカに輸出しても、トランプ大統領は対中国の関税を掛けるといっている。ならば、最初からベトナム生産に代えればよい。ファーストリテイリングも一説によれば、ベトナム生産の割合が増えているようだ。結果、ZARA、H&Mが苦戦する中、統計でもファーストリテイリングは最高益を達成するようだ。

 そもそも、どの国にも繊維製品にはもともと関税がかかっている。日本に課せられた35%という関税が、そのまますべてのアイテムにかかるのかどうかは、これからの交渉にかかっている。だが、ここに来て、政治は混乱をきわめ、トランプ大統領とまともに張り合える状況にも見えない。また、トランプも国の事情によって戦略を変えてきている。

 一番の敵は中国としても、日本はクルマ産業を狙って35% (トランプ関税10%一律 + 追加関税25%) となっており、この高齢国家で唯一の儲けがしらのクルマ産業の米国輸出が激減したら、(進むであろう円安と相殺されるとしても)日本のダメージは計り知れないことになる。こんな中で、1000円以下でフルセット買えるsheinやAliexなどの中国激安ECは日本で数千億という売上をたたき出し、若者もあれだけ批判されたファストファッションに戻りつつある。

 その理由は、価格であり、日本経済新聞によれば、あれだけ環境先進国といわれるフランス・パリでも、結局はSDGs 以上に価格コンシャスな激安ECに購買が流れているようだ。そして、世界の余剰生産の合計は総投入量の30%といわれ、地下に埋められているかアジアで焼却されCO2を排出し、その総量は、国際航空業界と海運業界を併せた排出量より、アパレル廃品の焼却問題によるCO2排出の方が多い。

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記事執筆者

河合 拓 / FPT Consulting Japan Managing Director

Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はDX戦略などアパレル産業以外に業務を拡大


著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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