西友買収でトライアルは首都圏をこう攻める?アナリストが評価する意外な点とは


 ファミリーマートが伊藤忠商事の完全子会社になり伊藤忠グループとしての総合力を発揮しようとしていること、ローソンが非上場になり三菱商事とKDDIという新鮮なタッグで独自路線を模索していることを考えると、セブン銀行という他のCVSとの差異化要因をわざわざここで切り出す判断も同意しかねます。むしろ新たなパートナーと座組をする判断も欲しいところです。

 今後のCVS事業はおそらく食に加えて個々人の健康を担う産業に変わると筆者は考えています。また非FC(フランチャイズチェーン)の小商圏小売業も種々増えていくと思います。セブン&アイはトップ交代によって財務的な話題だけではなく、新しいCVS業態のあり方を示し、それに邁進して欲しいと考えます。

中核事業の親子上場を整理するイオン

オンのロゴ

  総合小売のもう一つの雄、イオンは親子上場の関係にあるイオンモールとイオンディライトの完全子会社化を決めています。この2社はイオンの総合スーパー(GMS)のオペレーションの骨格を担うため、完全子会社化をしてイオンがフルコミットをして経営し、その成果をしっかり(2社の少数株主ではなく)親会社のイオンが享受するようにするのは真っ当な判断であり、筆者としては「ようやく実現した」と感慨深いです。その他の親子上場先、持分法投資先などに同じ動きが出るとは期待しにくいことが説明資料から読み取れますが、彼らに対しても暗黙のプレッシャーを生んでいることは間違いありません。イオンの考える経営時間軸は私の感覚よりも長い気がしますが、方向感としては正しい方向に向かっていると思います。

 さて、セブン&アイのSST事業の再活性化にはやはり規模が不可欠であり、西友との統合が第一歩だと私は元々考えていました。その西友が、今般トライアルの傘下に入ることが発表され、注目されています。

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記事執筆者

都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。

米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師

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