カタログ通販、EC駆使し売上過去最高!シニア女性の心つかむハルメクの戦略
事業間連携が生み出す相乗効果
ハルメクHDのもう一つの特徴としては、「情報コンテンツ」「物販」「コミュニティ」の3つの事業が密接に連携し、シナジー効果を生み出している点が挙げられる。
同社を象徴する商品の1つが、「ハルメク 健康サポート・骨盤底筋サポートショーツ」(以下、「骨盤底筋ショーツ」)だ。同商品が生まれたきっかけは、「ハルメク」に掲載した「尿漏れ対策」に関する特集記事だったという。「エクササイズをしても対策が難しい」といった読者の声を受け、オリジナル商品「骨盤底筋ショーツ」を開発、物販事業で販売を開始した。さらには、骨盤底筋を鍛えるためのオンライン講座など、関連するイベントも開催。「骨盤底筋ショーツ」は今や看板商品のひとつとなった。
3つの事業が果たす役割を、入山氏はこう解説する。「情報コンテンツ事業は、顧客の求める情報を届けるとともに、新規顧客獲得の入口としての役割も担っている。物販事業は、この世代ならではのお悩みに応えた高品質かつ顧客のニーズに合った商品を届ける。コミュニティ事業は、年間200本のイベント開催を通じて顧客との距離を縮め、『ハルメクコミュニティ』を形成する場となっている」。
物販事業においては、リアル店舗の出店にも注力している。15年に「大丸福岡天神店」(福岡県福岡市)に初出店して以降、全国の百貨店を中心に店舗数を拡大中だ。24年度は7店舗をオープンし、直近では10月、「松坂屋上野店」(東京都台東区)に出店した。リアル店舗を出店する目的は、顧客が商品を実際に手に取って試したり、販売員から商品の説明を受けることで、ECやカタログ通販では得られない購買体験を提供するためだ。また、百貨店を訪れるハルメクの会員以外の消費者との接点をつくり、新規顧客を獲得する拠点としても大きな役割を担っている。
いずれの事業も根底にあるのは、ハルメクHDの経営理念『50代からの女性がよりよく生きることを応援する』だ。「すべての事業は経営理念を実現するためにあるという意識は強く社内に浸透している」(入山氏)。そうした姿勢が顧客に寄り添ったサービスの提供につながっている。
「プレシニア層」獲得へ新施策
順調に顧客を獲得しているハルメクHD。今後の主な課題として入山氏が挙げるのは、現在50代を迎えている団塊ジュニア世代、いわゆる「プレシニア層」の開拓だ。
新顧客層の開拓には、「人参ジュース」「おせち」「骨盤底筋ショーツ」のような看板商品を新たに開発したり、ブランド力を強化したりといった商品戦略が求められる。全社的にヒット商品の開発をめざしており、靴やインナー、コスメなどのカテゴリで『ハルメクブランド』を確立させたい考えだ。
また、情報サイト「ハルメク365」のコンテンツ拡充やSNSを介した情報発信など、デジタルでのアプローチにも注力する。プレシニア層は、デジタル媒体やツールに馴染みのある世代。ニーズに応えるには、アナログを好むシニア層とは異なる訴求媒体やコンテンツの提供方法を強化する必要がある。
「50代以上の女性を取り巻く環境やニーズは常に変化している」と、入山氏。そのうえで「シニアマーケットに関する情報とノウハウを蓄積してきたハルメクとしては、国内のシニアをターゲットとするビジネスのみならず、今後高齢化が見込まれる海外市場にもひとつのモデルを提供できればと考えている」と海外事業の展望も語った。