6年後にめざす世界2000店舗!「鳥貴族」の海外戦略とは
国内の復調で満を辞して臨む海外進出
国内での不安を払拭し、満を持して挑むのが悲願の海外進出だ。コロナ禍がなければ早期に着手していたはずだったが、まさに雨降って地固まる。海外事業展開における知見やノウハウをもったメンバーも加わるなど、結果的に十分に体制を整えて、世界進出へのスタートを切ることになった。
新たに示した中計(25年7月期~27年7月期)では、その姿勢を鮮明にしている。まず長期ビジョンを「Global YAKITORI Family」を一新。「”焼き鳥”をYAKITORIに、”YAKITORI”を世界言語に」とするビジョンを掲げた。そのうえで、新中計を「海外事業の立ち上げと実績の積み上げ」と位置づけ、海外出店の土台を作る期間に設定する。
進出先としては、各国における日本食レストラン数をもとに判断。日本食の浸透度の高さや市場規模などから、ファーストゾーンを米国、東アジアに選定した。それぞれのエリアに合わせた店舗モデルの構築と展開を進め、将来的には米国モデルを欧州・豪州へ、東アジアモデルを中国、東南アジアへ展開していきたい考えだ。
米国ではすでに2店舗を出店しており、12月にオープンする1店舗を加えて米国モデルの構築へ検証を始める。3店舗は出店地域がいずれもロサンゼルスで、5月に事業譲受した「HASU Gardena店」、8月にオープンした自社ブランド「zoku Riviera店」、12月に開店予定で、米国における鳥貴族ブランド1号店の「TORIKIZOKU Torrance店」だ。焼き鳥を軸にしつつも、アラカルトメニューを充実させたレストランスタイルでの展開など、エリアに合わせて価格帯やメニューを変更しながらモデル構築を進める。米国でのブランド認知や、焼き鳥とお酒という消費スタイルがないことを考慮し、慎重に浸透を図っていくという。将来的には、フードコートなど新業態の開発も検討する。
一方、東アジアではお馴染みの黄色の看板をそのまま”輸出”し、日本の鳥貴族を再現したかたちで展開する。9月には台湾の台北と、韓国・ソウルに2店舗をオープン。いずれも出足は好調で、とくに韓国1号店では4900ウォンの均一価格が支持され、若年層の顧客を多く取り込んでいるという。韓国では29年までに300店舗の出店を計画しており、”鬼門”と言われるエリアでブランド力を追い風に一気に拡大する計画だ。今冬には香港にも出店予定で、その先には中国進出も見据えている。
こうした戦略のもと、目標に掲げるのは30年7月期までに直営、フランチャイズなどさまざま運営形態を含めて世界店舗数2000店舗への拡大だ。海外店舗比率も25~30%まで引き上げることをめざす。海外戦略のひとつとして、国内で高価格帯のメニューを提供する焼き鳥の有名店とも業務提携し、大衆価格にとどまらない中・高価格帯の業態も開発を進めている。
”YAKITORI”を世界言語化へ
リーズナブルな均一価格で焼き鳥の大衆化を実現し、日本の焼き鳥居酒屋を牽引する「鳥貴族」。このタイミングでの海外展開は、過去最高益の更新に貢献したインバウンド需要も追い風となっている。日本を訪れ、初めて鳥貴族を知った外国人観光客は、リーズナブルな均一料金で美味しく、サービス力も高い外食として、「鳥貴族」を認知。その期待を裏切らない商品力、おもてなしを海外で横展開できれば、現地でも着実に支持を得られるからだ。
人口減少フェーズの国内市場では顧客満足度の追求に注力し、海外市場では日本発の飲食業のサービス力で”YAKITORI”文化の浸透を推し進め、「スシ」、「テンプラ」、「ラーメン」に続く、日本食の地位定着を本気でめざす
今年5月1日には、社名を鳥貴族ホールディングスからエターナルホスピタリティグループに変更した。それは、世界の外食市場へ挑戦する社内外へのメッセージにほかならない。
創業以来こだわり、磨き続けるホスピタリティを強みに顧客第一主義を徹底し、奉仕の姿勢を崩さなければ、どの地域、どの国においても、永遠に繁盛店を生み出し続けられるはずだ。そして、その実現はそのまま「YAKITORI」の世界言語化につながっていく。