拝借スペックのPBでは生き残れない!GMS衣料品は自前開発を決意せよ
円安インフレが止まらない中、価格を抑えた小売業プライベートブランド(PB)への期待が高まっているが、ことアパレルに関する限り、総合スーパー(GMS)を中心とするチェーンストアPBの「品質」や「お値打ち」には疑問符が付く。販売消化の歩留まりや販管費率もともかく、商品の開発体制に根本的な課題があるのではないか。チェーンストア衣料品に詳しい、小島健輔氏が解説する。

消費者に見える 「品質」を左右する3要素とは
アパレルの品質に言及する時に着目されるのは、1番に「縫製品質」、2番に「素材クオリテイ」、3番に「仕上がり姿」だが、思い込みや偏見で語られることが多いし、消費者の目が行く順序は逆だと思う。
「仕上がり姿」は一見して商品の品質感を左右するものだが、実際の品質とは必ずしも一致しない。
「縫製品質」が高くても、プレス仕上げが雑だったりパターンと食い違えば(専用ボディの高価なプレスマシンが必要)、あるいは物流工程が雑で畳みじわが生じたりヨレてしまえば、一格二格下の商品に見えてしまう。自社のパターンが確立されているなら外注工場にプレス仕上げを任せず、「ZARA」のドレスアイテムのように自社専用のプレスボ
ニット製品では洗い縮絨(しゅくじゅう、繊維をからませて縮めること)仕上げで風合いとサイズ感が激変してしまい、商品価値が倍にも半分にもなってしまう。縮みが足らないとサイズが不自然に大きくなり打ち込みが甘く耐久性も怪しくなる一方、縮み過ぎれば毛足が寝てふんわり感が損なわれサイズが小さくなってしまう。
大手のブランドアパレルでも下手が目立つケースもあって熟練を要する業務だが、逆に言えば低価格品でも技次第で高品質に見せられる。泊まりがけで作業に立ち会うのが理想だが、ニットの縮絨管理に長けたサプライヤー(コントラクター/商社/企画問屋など)と組むのが現実的だろう。

「素材クオリテイ」はコストを左右する最大要素(生産原価の5〜6割)で、一般消費者も見て触れば物性を直感できるからごまかすのは難しい。似たような物性を素材の混率や合繊素材への置き換えなどでトレードオフするのが低価格商品の定石だったが、近年は軽く薄く柔らかいイージーケアな機能素材を売りにして旧来仕様のトレードオフとは一線を画する商品も多くなっている。今時のイージーケア機能素材やイージーフィット仕様については後述する。
同格素材でコストを落とすのは調達ロットで、千反単位、万反単位ともなればコストは激減するから、大手チェーンでは素材を集約して大型のMDを組むことが競われる。
「ユニクロ」は定石通りに色数とサイズ数でMDを増幅するが、「ZARA」は色数を1〜2色と極端に絞って、生産ロットもデザインもので1〜2万着、定番的単品でも5〜6万着強に抑制してひと蒔きで終わらせるのに加え、同一素材を自社の染色整理工場で面を変えて何段階かで消化し、製品の小ロット生産と素材の大ロット調達を両立させている。
「縫製品質」は量販品でも工場段階とサプライヤー段階で二重に検品されているはずで、もとより発注者が『B品でも良いから安くしろ』と指示しない限り、縫製始末が破綻した商品が売場に並ぶことはない。理屈はそうだが、「B品」とは言えないまでも始末が多少粗雑な商品が紛れ込むことはある。
アパレルの縫製仕様はアイテムごとにほぼ確立されており、各工程を担う専用工業ミシンと冶具と工員の熟練度が揃う限りは「縫製品質」は担保されるが、納期やコストが折り合わないとこれらが揃わない工場に発注されることもあるし、揃っていても納期やコストに無理を言えば仕事が荒れて始末が粗雑になることがある。それが一般消費者に判るかというと疑問で、「仕上がり姿」や「素材クオリテイ」の方に目が行くのではないか。一般消費者が一見して判るほど始末が荒れていれば「B品」に入るから二重の検品をすり抜けるはずはなく、生産地のローカル市場やアウトレットに放出される。
一般消費者には判らなくても、洋裁を習ったことがある人には始末の荒れは見過ごせないし、高級品に慣れた顧客や業界の玄人は許せないかも知れない。量販品として検品をクリアする以上の「縫製品質」求めるなら、発注者がサプライヤーや工場に指定するスペック(生産仕様)の課題となる。
「お値打ち」はスペック(生産仕様)開発体制が決める

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