プラットフォーム事業拡大に一手! アダストリアの新旗艦店「and ST TOKYO」の全貌
アパレル大手のアダストリア(東京都/木村治社長)は、東京都渋谷区のJR山手線「原宿」駅前に「and ST TOKYO(アンドエスティ トーキョー)」を4月24日にオープンした。同社運営のECモール「and ST(アンドエスティ)」の旗艦店に位置づけられる都心型リアル店舗だ。自社ブランドだけでなく他社ブランドも展開し、OMO(オンラインとオフラインの融合)施策の展開も強化した。アダストリアが事業戦略として掲げる「プラットフォーム企業への転換」に弾みをつける新店をレポートする。

新旗艦店では他社ブランドと協業、OMO施策も
「and ST」の新たな旗艦店に位置づけられる「and ST TOKYO」が位置するのは、原宿駅前の商業ビル「WITH HARAJUKU(ウィズ ハラジュク)」の1階だ。売場面積は約230坪。23年12月にアダストリア本体からEC事業を移管して設立されたアンドエスティ(東京都/木村治社長)が運営する。
同店は「JEANASIS(ジーナシス)」「LOWRYS FARM(ローリーズファーム)」「HEATHER(ヘザー)」「HARE(ハレ)」といった自社ブランドだけでなく、「PAUL & JOE(ポール&ジョー)」「Cath Kidston(キャス・キッドソン)」のコスメなど他社ブランドや、サンリオキャラクターといったIP(知的財産)との協業コーナーも期間限定で展開。これらを含め2000SKU超を扱う。さらにスイーツやドリンクを提供する飲食コーナーも併設。従来のアパレル専門店の枠組みに収まらない、特徴的な店舗構成となっている。

売場構成において特筆すべきは、店舗面積の3割以上を協業エリアが占める点だ。テーマを設定した上で、2週間~1カ月を目安に展開内容を入れ替え、来店客に常に新鮮な体験を提供する。年間100万人の来場者を目標として掲げている。
OMO施策にも注力する。自社のショップスタッフがウェブサイト上でスタイリングを投稿する「STAFF BOARD(スタッフボード)」の人気スタッフが店頭でライブ配信を行い、他社ブランドの紹介や、スタッフが企画した商品・別注アイテムの販売も行う。ワークショップや撮影会といったイベントも積極的に実施し、来店動機を創出している。

インバウンド向けの施策も強化する。生活雑貨を扱う「LAKOLE(ラコレ)」では土産物として需要の高いアイテムを品揃えするほか、英語・中国語対応スタッフも配置。インバウンドと国内客の比率は5:5を想定し、幅広い顧客層の獲得をめざす。

「and ST TOKYO」は単なる物販の場にはとどまらず、「情報発信メディア」としての機能も志向する。店内のポップアップコーナーや大型デジタルサイネージ、店内放送、サンプル配布などを活用し、ECモールの「and ST」に出店中、または出店を検討するパートナー企業の新商品やブランドの世界観を発信。新商品発表やプロモーションの拠点としての役割も担う。
木村社長は「単にモノを売る場ではなく、「and ST」のリアルな入口となる店舗だ。ポップアップコーナー展開による家賃収入やメディア収入も新たな収益源として予算化している」と説明した。