時価総額3200億円越え!お土産、ギフト用菓子の製造小売「寿スピリッツ」とは
お土産、ギフト用菓子の製造小売、寿スピリッツ
寿スピリッツの概要について述べておきましょう。
寿スピリッツは菓子大手で、お土産・ギフト用の複数の菓子ブランドを運営し、製造・卸売・小売を国内中心に展開しています。創業は古く1952年、上場は1994年です。1968年に製造販売を始めた饅頭「因幡の白うさぎ」で事業の楚を固め、その後、地域地域の特性を活かせる和菓子・洋菓子の製造を目指し全国に展開、さらに他社からのブランドの譲受も行って、現在に至っています。
現在展開するショップブランドは「ザ・メープルマニア」「東京ミルクチーズ工場」「フランセ」「ルタオ」「グラッシェル」「お菓子の壽城」「カノザ」「コンディトライ神戸」「赤い風船」「アイボリッシュ」などになります。
店舗立地についてざっと確認したところ、大都市圏については、JRの駅ビルと空港など集客の良い好立地を積極的におさえている印象で、実際に筆者の利用する駅でも列車の乗り換えの一番良い場所に出店していました。
価格帯については、高すぎる訳ではないものの、ちょっとした贈答用やお土産用には過不足ない品質を適正な価格で販売している印象です。ただしこれは私見ですので異論もあることでしょう。
以上のように、集客が容易な好立地に、贈答用ないしお土産用として見れば過不足ない品質の製品を取り揃えており、さらに消費者としては「買って」「持ち歩く」という面倒さが、駅の乗り換え場所などでサクッと買って済ませられるという意味で最小限になります。このような非価格面でのメリットがあるため、逆に価格設定には自由度が広がっているはずです。この結果、原材料や人件費などが上昇しても、適切な製造管理と比較的自由な売価設定を活かして着実に利益を出すことができることになります。さらに、この結果、立地を提供する鉄道や空港にとっても賃貸坪効率の向上につなげられることになります。
こうしたビジネスモデルの特性を下敷きに、人流の正常化の追い風が吹いたことが株価を上昇させている、このように現状を解釈できます。
寿スピリッツ、株価快進撃の要因は?
数値を確認しておくと、2023年3月の売上高は501億円(前年度比+55%増)、経常利益102億円(同+252%増)、親会社株主に帰属する当期純利益70億円(同+266%増)で、2020年3月期を上回りいずれも過去最高になりました。2024年3月期の会社予想も売上高558億円、経常利益117億円、親会社株主に帰属する当期純利益78億円とされており、最高益更新が期待されています。
さらに注目したいのが収益性です。2023年3月期の売上高営業利益率は19.8%で日本の上場食品企業の中でも傑出した利益率を出しています。自己資本比率が71%で財務安全性が高く、しかも自己資本当期純利益率は29%と海外企業並みの資本効率です。しかもキャッシュフローが潤沢でフリーキャッシュフローを生み出やすい体質です。
この種の事業にはどうしても流行り廃りの影響を考えざるを得ませんが、ブランドポートフォリオがこれまで拡充されてきたことも軽視できません。これだけの収益性であれば、株式市場はさらに目を向けざるを得ないでしょう。ワークマンがワークマンプラスなどカジュアル展開を進めて脚光を浴びた時に似た印象を筆者は感じざるを得ません。
今回寿スピリッツをご紹介しながら立地の重要性、ポテンシャルを再認識しました。特にJRはリモートワークの定着で定期券及び出張需要の完全回復を期待することが難しくなり、少なくなった旅客者の一人当たり収益を運賃以外で最大化することが必須です。エキナカ、駅ビルの強化がさらに進むとなれば、駅外にある百貨店などは一層の対策が必要になると思われます。百貨店にはこれをして欲しいという個人的なお願いがあるのですが、その話はまたいずれさせていただきたいと思います。
プロフィール
椎名則夫(しいな・のりお)
都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、
米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、
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