SHEINの秘密、「多品種少量生産」を可能にする広東スマートサプライチェーン網とは?

菊谷 信宏(glotech-trends)
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ファストファッションの大量廃棄問題に挑戦

 シーインのビジネスモデルを語る上で、もう一つ重要な論点を指摘しておきたい。

 ご存じのように、ファストファッション業界では近年、大量生産して売れ残った商品が大量に廃棄・焼却され環境に悪影響を与えていることが大きな社会的問題として取り上げられている。さまざまな企業がこの問題を独自の手法で解決しようとしており、たとえばSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)のもと、エコフレンドリーな取り組みを実践している企業の話を耳にすることも多くなった。

 そしてシーインも、この大量廃棄問題に対し独自の解決方法を提示する企業である。シーインが提示する解は非常にシンプルで、「ユーザーが欲しいものを欲しいだけ生産することが可能になれば余剰在庫が削減でき、廃棄の無駄がなくなればユーザーにより安い価格でよい服を提供できる」というものである。

 それを実現するためシーインは保有しているユーザーデータを多面的に活用し、ユーザーが好むファッション、デザイン、色、サイズ、数量などをより高い確率で予測し、それを生産プロセスに反映し、「必要なもの(多品種)」を「必要なだけ(少量)」製造すれば必然的に余剰在庫も生まれないという世界観を実現しようとしているのである。実はこうした発想は中国D2C業界では数年前から注目を集めており、シーインだけでなく多数の企業がこのような世界観の実現をめざしている。

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