倉林武也のインサイト入門②
「ショッパーインサイト」を捉える際の手順とポイント

2021/08/20 07:30
    倉林 武也(株式会社リテイルインサイト)
    Pocket

    まずは『ショッパーインサイト』

     インサイトは誰を対象に設定するかにより、掘り下げていく際の声や行動が全く異なってくる。課題解決への取り組みとして対象がショッパーやコンシューマであったり、企業における担当者であったり。目標や課題・戦略によっても誰を対象にすべきかが変わる。例えば下記のようなものだ。

    ・電気シェーバーの新製品の開発などを行う場合、使用している男性(コンシューマ)のインサイトを捉える。

    ・保険会社が新しい家族向けサービスによるアプローチを行う場合、契約を期待するファミリー層(コンシューマ)のインサイトを捉える。

    ・洗剤やシャンプー、冷凍食品の販売促進のテーマを考える場合、普段買い物をする買い物客(ショッパー)のインサイトを捉える。

    ・小売業が客単価アップなどの施策を考える場合、自店の来店機会の多い買い物客(ショッパー)のインサイトを捉える。

     小売業が登場する場合は、買い物行動や売場にある原理(売場と買い物の定説)なども影響してくる。インサイトへの着眼は従来、企業がアプローチをする対象を「ターゲット」として年齢や性別など属性で大きく括っていたことからの見直し(反省)の点がある。年齢や性別で捉えるのではなく、買い物客や商品を使用している人のインサイトを捉える方が、『一人十色』と言われる時代のアプローチ方法として効率的であることも背景にある。今の企業の課題に「売上アップのために突破しなければならない壁」があり、同時にビジネスの場面で働く皆さんひとりひとりも(オンラインでもオフラインでも)買い物客となりうることから、まずはショッパーインサイトをテーマに進めていきたい。

    企業は誰を対象に捉えるか?
    ※クリックで拡大

    買い物の場と買い物客(ショッパー)の両面を捉える

     皆さんはひと月のうちに何回くらい自分で買い物をしたり、家族と一緒に買い物に出かけたりするだろうか?ショッパーインサイトを掘り下げる際には「自分が買い物客の立場ならば」と言う設問やシーンを想定しながら考えを進めていく。アンケート調査などの莫大な声からインサイトのヒントを抽出していくことも大切だが、自分自身が買い物客であったらと考えることを習慣化したい。

     商品やサービスが展開される売場や売り方が想起(場面の捉え方が)できるかは、インサイトによって得られたテーマや切り口から解決策を考えていく中で大切なステップになる。買い物をしている時に目線が止まったものや自分が手にしたもの、意識はしたが最終的に購入をしなかったもの。ショッパーインサイトを見つけようとする際に、こうしたひとつひとつのモノの捉え方や立ち止まって考えることを怠らないことが、多くの人が頷く(展開につないで効果を生むための)インサイトを見つける条件になる。インサイトを見つけることとは自分自身を含めて、「なるほど」と頷けるテーマを見つけることともいえる。

     

    プロフィール

    倉林 武也(くらばやし たけなり)

    倉林 武也株式会社リテイルインサイト
    代表取締役コンサルタント アカウントプランナー
    美術学校・私立大学卒業後に株式会社クレオに入社。企画職、営業開発部、教育研修部部長として流通小売業、メーカー、サービス業のマーケティング、プロモーションの業務に従事。2018年11月に起業、株式会社リテイルインサイト(千代田区大手町)を設立。代表取締役。コンサルタント、アカウントプランナーとして主に大手メーカー企業、リテイルにおいて、消費者や買物客のインサイトを起点にした行動デザインの応用や、実務的なデジタルの活用など人や組織を動かす仕組みを追求している。2015年から2020年の国内外の主に店頭におけるプロモーション事例を収集・分析。学習院マネジメント・スクール研究員。

    1 2
    © 2024 by Diamond Retail Media

    興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
    DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

    ジャンル
    業態