コロナ禍の勝ち組「生協」が進める新たな「連帯」とは
新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大による“コロナ特需”を大きく受けた業態の1つが生協だ。一方でアマゾンをはじめ競合も食品宅配事業を急拡大させており競争はいっそう激化している。そうしたなか、生協が抜本的な組織構造改革を進めることを明らかにした。その具体的な構想とねらいを、生協専門紙「コープソリューション新聞」の宮崎元編集長が伝える。
21年度に入っても
引き続き好調
巣ごもり需要の追い風を受け、2020年度は全国の多くの生協の経営実績が過去最高となり、全国121の地域生協の総供給高(小売業の商品売上高に相当)は初めて3兆円を突破した。
21年度は、前年の反動減やワクチン接種の進捗によるコロナ禍の沈静化を想定し、大幅な減収減益計画でスタート。しかし第1四半期(21年1~3月)の事業概況(55生協・コープソリューション調査)は引き続き好調と言える。供給高が対前年同期比96.3%、経常剰余は同79.7%と減収減益ではあるものの、減少幅を計画より抑え、実績は予算を大幅超過した。コロナ感染拡大前の19年度の同時期との比較では115%と大幅増益となっている。
未だコロナ禍の収束が見えないなか、消費者の内食化の傾向は続いており、この夏場は東京五輪の自宅観戦、帰省や旅行の自粛の影響で生協宅配への受注は加速している。コロナ禍の動向が不透明で予測は難しいが、21年度は19年度比で2ケタ増を維持できる見通しだ。
コロナ禍で得た原資で
成長投資を進める
こうしたなか日本生活協同組合連合会(東京都:以下、日本生協連)は7月15日に記者会見を開き、21年の重点施策を発表した。スローガンに掲げるのは「チャレンジ 変革 2021」。20年度に創出した前年度の約3倍の経常剰余を原資に、宅配事業を中心に抜本的な改革を推進する方針だ。
21年度の業績も引き続き好調であるにもかかわらず改革路線を打ち出した背景には、将来的な事業継続において生協陣営が危機意識を持っていることが挙げられる。
生協宅配を取り巻く環境は、食品宅配市場の競争激化や人口減による市場の縮小など、将来的に厳しい環境に向かうというのが各地域生協の共通認識で、22年度以降は事業の柱である生協宅配も厳しい局面に入ると見られている。
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