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ドラッグストアの針路 #8 イオン主導によるドラッグストア再編の可能性

有力ドラッグストアチェーンへの資本参加やM&A(買収・合併)など、イオン(千葉県)がドラッグストア業界での存在感を強めている。ウエルシアホールディングス(東京都)、ツルハホールディングス(北海道)と業界1、2位を傘下に収める同社。イオン主導によるドラッグストアの再編はありえるのだろうか。
HD=ホールディングス

「いずれ統合」も今は昔か

 「大手2社は(統合の)気配さえない」

 そう話すのは、あるドラッグストア企業の幹部だ。2社とは、イオン子会社のウエルシアHDとイオンが株式の13.06%を握るツルハHDのことだ。

 かつては「いずれ統合まで発展するのではないか」と言われ、経営統合が既定路線とみられていた両社だが、そんな観測も今では怪しい。両社は同業のM&A(合併・買収)合戦を繰り広げ、競うように積極出店している。売上高はほぼ互角ではあるものの、両社の“距離”は開くばかりだ。「当面はないんじゃないの。だって今はイオンを介して繋がっているだけでしょ」と別のドラッグストア幹部も冷めた見方だ。

 ウエルシアHDの売上高は1兆円に“王手”の状態で、ツルハHDも1兆円を射程圏にとらえている。1兆円規模の巨大企業同士が経営統合しても、「どちらが主導権を握るのか」という問題が浮上するのは間違いない。ある経営コンサルタントは、「(対等に)統合したとしても、経営がうまく回っていくとは限らない。それは、ほかの業界のいくつかの経営統合をみても明らか。いまは業界全体が伸びているのだから、統合は考えていないのではないか」と指摘する。

マツキヨココカラ&カンパニーの売上目標は「高すぎる」?

 そんな見方を覆す要因があるとすれば、2021年10月のマツモトキヨシHD(千葉県)とココカラファイン(神奈川県)の経営統合だろう。両社は統合後、「マツキヨココカラ&カンパニー」となり、2026年3月期までに売上高1兆5000億円の達成を目標に据える。

 この目標について業界では、「自力で達成をめざすのはハードルが高すぎる。明らかにどこかのチェーンを取り込むことを考えている」と観測されており、数千億円規模の上位企業との提携を画策している可能性も考えられる。

 だが、ドラッグストア業界再編のキャスティングボードを握っているのは、やはりイオンではないだろうか。

 2020年3月にイオンの岡田元也氏は代表権のある会長となった。岡田会長は社長交代の会見で、今後は吉田昭夫社長がほとんどのことを担当するとし、自らの役回りについては「(一段と)グループ力を発揮できるようにしていきたい」と意味深な発言をしている。

 もちろん、岡田会長のこの発言はイオンが資本参加しているドラッグストアを直接指したものではないだろう。しかし、イオンにとってプラスになり、ウエルシアとツルハの両社にもプラスになるのであれば、可能性はゼロではない。

GMS、SC、そしてドラッグストア

 実際、イオングループでは、食品スーパーやGMS(総合スーパー)を地域単位で統合している。ドラッグストア市場規模はすでに百貨店を抜き去り、コンビニに代わる小商圏の有力業態の候補となりつつある。

 これまでもイオンは「ショッピングセンターの時代が来ると」して、それまでGMSの主戦場だった全国の一等地や駅前とは真逆の郊外に大規模なSCを開業し、時代の変化に対応してきた。次なる成長業態としてドラッグストアに期待しているのは間違いないだろう。

 現在の局面では、イオンがグループのドラッグストアを再編する可能性は極めて低い。しかし、マツキヨココカラ&カンパニーの誕生が業界を揺るがす新たな動きを誘発する可能性も十分に考えられる。