第269回 兄弟の訣別 中内㓛が20億もの大金を個人で用立てなければならなかった事情

文=樽谷哲也(ノンフィクションライター)
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評伝 渥美 俊一(ペガサスクラブ主宰日本リテイリングセンター チーフ・コンサルタント)

不分明なからくり

 末弟の中内力(つとむ)がなんとか兄たちの間を取り持って、ダイエーとスーパーサカエを友好に大同団結させようと再三試みた苦労は、ついに実を結ぶことはなかった。そして、父・秀雄の提案により、ダイエーを長兄で社長の中内㓛と、末弟で専務の力がそれぞれ統治するという非合理な東西分割構想が現実のものとなろうとしていた。

 しかし、1968(昭和43)年の暮れも押し詰まった12月25日、㓛との話し合いの場で、力は「兄貴、俺が身を引く」と悲壮な断を下すのである。

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