社員が成長を実感できる組織へ人材教育に本腰入れる=東急ストア 須田 清 社長
作業を標準化し新たな従業員教育
──15年度は何に重点的に取り組む考えですか。
須田 経営にとって単年度で終わる政策というものはなく、当たり前のことを当たり前にやり続けるのが経営でしょう。これまで当社も、当たり前のことを当たり前にやってきただけで、とくに新しいことをしたわけではありません。前年度の政策を進化させつつ、今年度はこれにチャレンジしようという形で政策を積み重ねてきました。それが徐々に定着してきたということだと思います。
これまでの政策をさらに推進することに加えて、15年度はとくに力を入れていきたいと考えているのが従業員教育です。当社は来年創業60周年を迎えますが、社員の年齢構成からすると今後5年ほどで相当数の店長、副店長クラスが定年退職を迎えます。新規採用数よりも退職者数が多いため、社員数は年々減っていく傾向にあります。加えて、当社が店舗を展開する都心部ではパート・アルバイトの確保が非常に難しい状況です。
従業員教育は、パート・アルバイトの定着率を引き上げようというのがねらいです。
じつは当社ではこれまで、社員、パート、アルバイトの仕事が明確になっていませんでした。そこで、社員は部門の運営責任者、パート社員は実行責任者と、役割を明確に分け、開店前から閉店後までのすべての作業を1つ1つ見直しました。外部のコンサルタントを活用して、客観的な視点から、しっかりとした作業の標準をつくっていく計画です。
15年度は、8つの営業エリアの1店舗ずつに、店舗を指導しているスタッフが一緒に入り、標準化された作業を定着させます。外部コンサルタントにも協力していただきながら、教えるノウハウも磨き、次年度以降、指導する店舗を増やしていきます。こうした段階を経て、3年間で全店に作業の新しい標準を定着させる計画です。その標準に合わせて、必要な従業員教育を、あるいはそこに必要なスキルの研修をしていきます。
──これまでとは異なる従業員教育になるのですか。
須田 入社時や昇格時以外にも、経過年数、資格等級に合わせて、全社員を対象に教育を強化していくことにしています。教育を通じて、今やる気になっている社員たちが、自らの成長を感じられる組織にしていきたいと考えています。
人手不足は最も重要な経営課題の1つです。当社は今、対策を打ち始めたところですが、労働単価の上昇と労働力そのものの減少はSM業界にとって非常に深刻な問題です。
東急ストアの店舗がお客さまの役に立ち、従業員が明るく元気で働ける環境が整っていれば、おのずと人は集まってきて、長く働いてもらえるようになるでしょう。パート社員の方には最初にしっかりと研修をして、不安を取り除くことで離職率が大きく下がりました。ですから、新しく働いていただくパート社員は原則として入社時に研修に参加していただいています。
これまで、定年退職する社員を再雇用するときは、役職につくことはなかったのですが、これを、スキルとやる気があって健康な方については60歳を過ぎても店長や副店長、課長などの役職につくことができ、一定の賃金で働いてもらえる制度に、昨年切り替えたところです。60歳を過ぎても働くことができる、そして会社が自分を必要と認めていることがわかれば、先行きの不安が払拭されるはずです。
従業員にとっても、会社にとっても、さらにお客さまにとってもいい。そんなウィン-ウィン-ウィンの関係を構築していきたいと考えています。そういう関係でなければ、従業員も疲弊してしまい、売場のあるべき姿も維持できません。会社の成長にとって、人材教育は非常に重要です。