「日本最大の6次産業」を標榜、第1次産業を守り、育てていきたい=神戸物産 沼田博和 社長
輸入品の新フォーマット
──一方、成長を続ける「業務スーパー」については課題はありますか。
沼田 FC展開をスタートし十数年間、これまで基本的な仕組みの変更なしにきたため、改善すべき点は多いと考えています。
現在、改革の必要性をもっとも感じているのは、物流コストの削減です。従来、フランチャイジーには、まとまった数量でしか発注できない商品が一部あったのですが、この単位を小さくすることで、加盟店の在庫過多や欠品といった問題を解消したい。細かなムダの排除を重ねることで、「業務スーパー」のさらなる競争力強化につなげていければと考えています。
──「業務スーパー」以外の小売フォーマットの開発にも当たっていると聞いています。
沼田 そうです。今年4月、兵庫県神戸市に新しいフォーマットとして輸入食材店の「ガレオン」をオープンして、手応えを得ています。
これまで神戸物産は、日常的に必要な食材を低価格で販売することに主眼を置いてきましたが、今後は「ちょっとぜいたくで珍しい」商品を提供するような、主力の「業務スーパー」とは異なるマーケットも探っていく方針です。
「ガレオン」の1号店の売場面積は25坪で、ここに欧州や米国、アジアなどから自社で輸入した食品を中心に品揃えしています。フランスの菓子や、イタリアのパスタ、アジアの缶詰など約800~900品目を扱っており、中心価格帯は250円です。将来的にはFC展開も視野に、このフォーマットをサポートする輸入小売部門も新設しました。
──どのような商品が売れますか。
沼田 最も売れているのは、オランダの伝統的なお菓子「ストロープワッフル」です。イタリアのワインやホールトマト缶も売れ筋です。自社工場で焙煎した豆を使った、93円(税込100.44円)の「淹れたてコーヒー」も人気があります。
実は「ガレオン」は、もともと「業務スーパー」を補完するフォーマットという位置づけでした。「業務スーパー」でも輸入品は扱っていますが、原則として大袋が多く、初めての人が試すにはハードルが高い。そこで試食販売を実施するなど、商品を知ってもらう場として開発したのが「ガレオン」なのです。
しかし実際に開店してみると、「業務スーパー」とはまったく異なる層の顧客に支持されていることがわかりました。現在、2号店に向け、ノウハウを積み上げているところです。
──新たな商品の導入や商品開発のヒントはどのように得ているのですか。
沼田 海外で開かれている商品展示会に継続的に参加し、商品政策に生かしています。「世界の本物直輸入」をコンセプトにした商品も、5年ほど前にある展示会を訪れている時に着想したものです。
このほか、現在取り組んでいるものにハラールフードがあります。イスラムの律法に適合した食品で、特殊なものが多いのですが、一定の需要があるマーケットとして継続して取り組んでいます。
現状、トップダウンによる商品開発が9割以上です。ただ今後は、自社の食品工場からの提案などボトムアップ式による商品も増やし、よりバランスのよい商品構成を実現できればと考えています。
米国のSMを定期的に視察
──独自の品揃え、店づくりが特徴の「業務スーパー」ですが、参考にするSMチェーンはありますか。
沼田 沼田CEOとともに定期的に渡米、各地のSMチェーンを視察してエッセンスを取り入れています。感心するのは、どの企業の店舗も非常に独創的な店づくりをしている点です。たとえ、目を閉じて店の中に入ったとしても、店内を一望すればどのSMチェーンの売場であるかがすぐにわかります。自社の店をいかに特徴づけるかについて、徹底的に研究しているのだと思います。
これに対し、日本のSM企業はどの企業の店かを見分けるのは難しく、同質化競争を繰り広げているという印象です。また米国のSM企業に比べると、利益率は低水準であるといえます。当社としては、米国のSM企業のような、徹底的に差別化をねらった店づくり、品揃えを実践していきたい。実際、「業務スーパー」にしかない商品が多いので、来店していただいているのだと自負しています。
──加盟店のリクルート状況も順調のようですね。
沼田 FC展開を始めた当初は、個人の加盟店が多かったのですが、近年は企業フランチャイジーが複数店舗を展開するケースも増えています。さらに昨年あたりからは、新しい企業の加盟が目立ち、新たな展開に期待しているところです。
──ロイヤルティは仕入れ金額の1%など、一般的なFCの条件に比べ、低い水準であるのも「業務スーパー」の魅力になっています。
沼田 当社はロイヤルティではなく、メーカーとして商品供給を主な収益源と考えているためです。加盟後の自由度の高さも当社FCの特徴です。当社が提供、もしくは販売するのは商品のほか、売場運営のノウハウ、独自の什器などです。本部では取り扱いのない生鮮品などは、原則、加盟店におまかせする方針で、各店とも販売方法を工夫しているようです。
──自由度の高さが各店の工夫につながるという、好循環を生んでいます。
沼田 当社では今後も、他社にはない独自商品の開発に力を入れるほか、「6次産業」企業として、今日、お話ししたような新たなビジネスも探っていく考えです。
こちらもおすすめ
>ニューヨークに和食レストランの1号店を出店 「業務スーパー」のフランチャイズ(FC)展開も計画