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「神戸物産」20年10月期決算、純利益前年比24.8%増で新規出店も好調、来期も“堅実”な成長をめざす

神戸物産(兵庫県/沼田博和社長)は12月14日、2020年10月期決算説明会を行った。コロナ特需により主力業態の「業務スーパー」が好調で、中間決算では売上高、純利益ともに過去最高を更新した神戸物産。下期に入り伸び幅は落ち着いたものの、通期では売上高が対前年比13.8%増、純利益は同24.8%増と大幅な増収増益での着地となった。

11月にリニューアルオープンした高円寺店

コロナ特需で業績は好調

 神戸物産の2020年10月期決算は、売上高3408億7000万円(対前期比13.8%増)、営業利益238億5100万円(同24.0%増)、純利益150億4700万円(同24.8%増)となった。増収増益の要因は、主力の業務スーパー業態がコロナ禍で高まったまとめ買い・大容量のニーズを大きく取り込んだためと見られる。

 四半期単位での推移を見ていくと、第1四半期(昨年11月〜今年1月)の売上高対前年同期比は5.1%増だったが、コロナの流行が拡大した第2四半期(2〜4月)に同21.8%増と大きく伸びた。以降、コロナ需要がひと段落するにつれ伸び幅は減少したものの、最終的には同13.8%増と好調な着地となった。

 主力業態の業務スーパーは、全国全店の出荷実績が67カ月連続で前年実績を超えるなど好調。店舗数は、10月末時点で879店舗となり34店舗の純増、目標としていた30店舗を上回った。

PB強化に注力

 神戸物産が今期とくに注力したのは商品力の強化だ。プライベートブランド(PB)の売上構成比を引き上げるため、4月に岡山県のスイーツ製造工場を買収、7月に神奈川県で食肉加工工場の稼働を開始した。とくに冷蔵の牛肉・豚肉についてはFC本部からの商品供給がなかったため、加盟店が必要に応じてそれぞれ独自に仕入れる必要があったが、工場の稼働によって本部から一括供給、全店舗で取り扱いが可能になった。

 また、コロナ禍で人気の集まった冷凍野菜や冷凍フルーツは、今後も積極的に開発を進める。とくに、下処理を済ませ油通しした状態で冷凍した「揚げなす」が大ヒットしたことを受け、“一手間を減らす”新商品の開発に沼田博和社長は意欲を見せた。

コロナ禍でも好調だった総菜事業

 コロナ禍で他のスーパーマーケット(SM)では総菜の不調が目立ったが、神戸物産ではほとんどの既存店で前年実績を超えた。総菜を取り扱うのは中食事業「馳走菜(ちそうな)」で、業務スーパー内に出店し店内製造の弁当などを販売するもの。今期は10店舗から25店舗まで数を増やし、10月には初めて業務スーパー以外のSM内にも出店した。認知度が向上してきたことや、業務スーパー自体のお客がコロナで増加し、“ついで買い”で売上が伸びたものとみられている。今期の好調を受け、馳走菜は将来的に500店舗まで拡大をめざす。

出店戦略のカギは九州と関東圏

 今期目標を上回る35店舗を出店した神戸物産だが、新規出店のほとんどは九州で行われた。業務スーパーの契約形態には2種類あり、一つは「直轄エリア」と呼ばれる地域で行われる一般的なフランチャイズ契約。もう一つは「地方エリア」と呼ばれる地域で行われるもので、許諾を受けたオーナーだけがその地域で出店することができる、というライセンス契約だ。ライセンス契約のデメリットとして、本部からの仕入れにかかる物流費がオーナー側の負担となるという点がある。

 九州は地方エリアに属してきたが、神戸の配送センターからの物流費が高くつくため出店が伸びなかったという背景があった。これを解消するため鹿児島を除く九州を直轄エリアに変更、オーナー側の負担を軽減したことで出店数が増加。「来期も九州への出店がカギになる」と沼田博和社長は話す。

 また、出店戦略に変化が見られたのが関東圏だ。業務スーパーとして十分な品揃えをするためは120〜150坪程度の売場面積が必要だが、関東圏では物件の確保が難しい。「狭い面積で無理に出店すると品揃えが不足し、結果売上が伸びきらないというのがこれまでの傾向だった」(沼田社長)が、今後も店舗数を伸ばし続けるためには狭小店舗での成功パターンを掴む必要がある。そのため現在、什器の工夫などで、80坪程度でも十分な品揃えを確保できるよう試行錯誤を重ねている段階だという。ただし、今後も「従来の面積での出店を基本とし、狭小店舗は代替策。積極的に展開していくことは考えていない」(沼田社長)。

 これらの施策により来期924店舗、2025年頃をめどに1000店舗を達成したい考えだ。

来期の業績予想は堅実

 神戸物産は20年10月期の業績好調を受け、中期経営計画を上方修正。21年10月期の業績予想は20年10月期比で売上高は横ばい、営業利益4%増、純利益は6%増とした。これについて沼田社長は「保守的に見えるかもしれないが、今期はコロナ特需が大きな追い風だった。この影響を取り除いて現実的な数字を設定した」と話す。また、来期の出店目標は45店舗の純増とした。

 「1000店舗達成が十分射程距離に入ってきたが、その先を考えると今から取り組んでいかなくてはならないことが多い。売上をしっかり作るために日々努力を重ねたい」と沼田社長は締め括った。