アフターコロナのEC通販になぜ「物流」戦略が必須なのか
自社の倉庫から、自社の社員が行う出荷は、出荷ルールに融通が利いたり、商品在庫をすぐに確認できたりといったメリットがあるが、2つの決定的な弱点を抱える。
①出荷量の波動に対応できない
②出荷の拡張性を担保できない
まして、今回のコロナ特需のように、前年同月比10倍の出荷となると自社社員では対応不可能だ。受注増というと、出荷の人員だけ気にする人がいるが、出荷増も同時に起こる。出荷にばかり気を取られていると、出荷検収前の商品が山積みとなり、「商品が倉庫に届いているのに欠品」といった現象も起こる。
物流においてはある意味、「スペースは力」だ。ゆとりのスペースがあるのとないのでは、需要の大きな波動が来たときに致命的な差が出る。そのため、スペースの拡張性は重要なポイントなのだ。
出荷量の波動に柔軟に対応できる人員規模
アフターコロナ時代に、物流アウトソーシングの重要性は高まる一方である。しかし、ただアウトソーシングすればよいというものではない。ビフォーコロナ時代の常識は通用しない。アフターコロナに求められる物流センターの条件は5つ、挙げておきたい。
第1の条件は、出荷量の波動に柔軟に対応できる人員規模があることだ。スペースと同様「数は力」である。平均的な EC 物流では、1人が1日に出荷できる件数は50件だ。商品の大きさやオーダー点数によって変動するが、1日1000件の出荷なら20人いれば定時で出荷が完了する。
そこにコロナ特需で6倍、6000件の受注が来たとしたらどうだろう。普通に考えれば人員も6倍の120人、確保しなければならない。しかし、100人を追加採用するのも大変だが、将来、コロナの感染拡大が収まり、特需が終われば今度は、100人の雇用維持の問題が出てくる。「数は力」の法則から言うと、スタッフ数の多い物流センターほど、こうした出荷量の波動に柔軟に対応できる。
例えば、スクロール360のメインの物流拠点であるスクロール・ロジスティクス・センター浜松西(SLC 浜松西)にはスタッフが1000名いて、常時出社は600名だ。スクロール360が受託している EC ショップは20社あり、これらのスタッフが土日を含めシフトを組んで毎日、約2万件の出荷を行っている。
あるショップの出荷量が急増した場合、その出荷場に要因をシフトする。物流を代行しているショップが多いため、出荷が増えているショップもあれば、落ち込んでいるショップもあり、全体で調整すれば100 名単位 のシフトも可能だ。ただし、そのためには各 EC ショップから前月末に翌月の出荷予測件数をもらい、日々の必要スタッフ数の予測を立てる。