今でこそ、ディスカウントスーパーとして首都圏で絶大な存在感を放つオーケー(神奈川県/二宮涼太郎社長)だが、同社は本来の意味での「チェーンストア運営」を貫いている企業でもある。徹底したローコストオペレーションでねん出した原資を安売りに回し、価格政策では「EDLP(エブリデイ・ロープライス)」を貫く同社。なぜ、オーケーは強いのか――。
ローコスト運営を徹底
オーケーの創業者、飯田勧氏は老舗酒類問屋・岡永の2代目経営者、飯田紋治郎氏の三男である。
飯田家はまさに実業家の家系だ。四兄弟のうち、長男の博氏は岡永の現会長を務め、次男の保氏は居酒屋チェーン「天狗」などを展開するテンアライドを創業、四男の亮氏は警備サービスのセコムの創業者、そして勧氏はオーケーを創業した。
オーケーの最大の特徴は、ローコストな経営スタイルだ。現在、オーケーの本社は横浜市西区に移転しているが、かつては京浜急行線本線「雑色」駅の近くの本部を置いていた。旧本社ビルはボウリング場を改造した建物。改造といっても、レーンを撤去しただけの簡素な造りで、ボウリング場だったことがすぐわかる、味わいのあるオフィスだった。
こうしたローコストな経営スタイルは店づくり、売場づくりにおいても貫かれている。「ローコストオペレーション」の店舗運営による、徹底したディスカウント路線はオーケーの真骨頂といっていい。レジ袋有料化が始まる以前からレジ袋は別料金とするなど、「商品価格を1円でも安くする」という創業者・勧氏の思想が現在に至るまで受け継がれている。
絶大な顧客の支持、その理由は
ただ、オーケーが標榜するのは「消費者第一主義」であり、「ただ安い」だけではない。
それを象徴するのが、オーケーの店内の至るところに配置されている「オネストカード」だ。
「オネスト」とは直訳すると「正直」という意味。たとえば、青果売場ではこんなカードが商品に添えられている。「キュウリについて」と題し、「大雨と曇天の影響で、生育不足や各産地の生育遅れが発生しており、入荷量は例年の2割減、価格は5割高と高騰しています。代わりにカットサラダのご利用をおすすめします」と記されている。オネストカードでネガティブな情報を包み隠さずお客に伝えることで、買物する際の判断材料としてもらうという意図だ。
競合店対抗値下げもその1つ。オーケーは「万一、競合店よりも高い商品がございましたら、お知らせください。値下げします」という記したサインを売場の随所に掲げている。競合店の売価を調査し、自店の価格が競合店の目玉商品や特売商品よりも高かった場合は、「競合店に対抗値下げしました」というPOPを添え、価格を引き下げている。
こうした取り組みを創業当時から愚直に実践していることもあって、顧客からの支持は厚い。日本生産性本部サービス産業生産性協議会が実施する「JCSI (日本版顧客満足度指数)」の2020年度第1回調査においては、オーケーがスーパーマーケット業種の第1位に輝いている。11年度に調査対象となってから10年連続の1位であり、支持はまさに圧倒的だ。
「借り入れなしで年率20%成長」へ
かつては安売りをめぐって大手ビールメーカーと主張が食い違い、軋轢を生んだこともあるオーケーだが、食品スーパー業態では珍しい徹底した安売り戦略は、コロナ禍による“巣篭もり特需”の以前から高い成長率を維持している。
オーケーの20年3月期業績は、売上高(テナント除く)が対前期比10.6%増の4347億円、営業利益は同24.6%増の228億円だった。経常利益率は前期から0.63ポイント増の5.42%、経常総経費率は同0.61%減の16.11%と、経営効率を示す指標でも脅威の数値を叩き出している。
オーケーでは「借り入れなしで年率20%成長を達成する」という経営目標を掲げている。売上高を見ると、17年度からのわずか3年間で1000億円を積み増していることからもその高い成長性がうかがえる。
16年には主要株主の1社である三菱商事から迎え入れた二宮涼太郎氏が社長に就任。三菱商事グループとの連携にも期待がかかる。今では少なくなった「正統派チェーンストア」は、この先どのような成長を見せてくれるのだろうか。